ロムニー敗北の最大の原因は、アメリカの現実である黒人やラテン系、アジア系を軽視した政治姿勢にある


 結局、共和党のロムニーに「人種バブル」は起きなかった。6日に投開票された米大統領選の出口調査結果によれば、ロムニーは白人票の59%を獲得した。目標とした60%に若干届かなかったものの、上々の出来だ。ただ白人票を60%獲得したとしても、一般投票数で勝利はできなかっただろう。

 その理由はこれまで通り、共和党支持者に人種的な広がりがなかったからだ。極論すれば、ロムニーに投票したのは白人だけだった。

 もちろん、すべてが白人だったというわけではない。ただロムニーの得票率は48・1%で、そのうち白人は42・5%。つまり、彼に投票した人の88%は白人だった。ちなみに黒人は2%、ラテン系は6%、アジア系は2%、そしてほかの人種はすべて合わせても2%だ。

 一方、オバマに投票した有権者の内訳は白人が56%、黒人が24%、ラテン系が14%、アジア系は4%。その他の人種は2%だった。

 白人が支配的な政治メディアは最後まで、ロムニーが限られた人種にしか支持されていないことから目をそむけていた。今やアメリカの現実とかなりずれている白人有権者層が、一般的な政治状況を反映していると勘違いしていた。だからこそ、選挙戦の最終週にニューヨーク・タイムズ紙はペンシルベニア州から次のようにリポートした。


 確かな手ごたえがある――郊外の富裕層地域の邸宅に掲げられたロムニー支持の看板や、空いた時間にロムニーへの投票を呼びかける電話をかける共和党支持者の母親たちの興奮した声が示すのは、選挙戦の流れが今やロムニーに傾いているということだ。


 だが、実際にはペンシルバニア州はオバマが5ポイント差で制した。

 白人の「分離主義」は、オバマ支持者を分裂させるのにも不十分だった。オバマへの支持はかなり広範囲で、もし白人のオバマとロムニーの支持が50%と50%だったら、オバマは総得票の58%を獲得していた可能性がある。

 米FOXニュースのキャスターであるビル・オライリーは我慢できなかったのだろう。出口調査と開票速報でロムニーの敗北が分かると、人種差別的な偏見をあらわにした。


 アメリカはもはや伝統的なアメリカではない。50%のアメリカの有権者は、とにかく物をほしがっている。物がほしいのだ。彼らに物を与えるのは誰か? オバマだ。オバマはそれ分かっていて、乗じたのだ。

 20年前なら、オバマはロムニーのような立派な候補者によって完全に打ち負かされていただろう。白人の権力者層は今や少数派になってしまった。そして有権者の多くが今の経済システムは自分たちにとって不公平で、とにかく物をほしいと感じている。