日本触媒」で爆発、消防士1人死亡 兵庫・姫路

29日午後2時35分ごろ、兵庫県姫路市網干(あぼし)区興浜の化学工場「日本触媒姫路製造所」で、紙おむつの原料となるアクリル酸の入ったタンクが爆発した。消防隊員1人が死亡し、従業員や消防隊員、警察官の計30人がやけどなどの重軽傷を負った。

 県警によると、死傷者はいずれも男性で、24~59歳。全身やけどで死亡したのは網干(あぼし)消防署の消防隊員山本永浩さん(28)=同県高砂市高砂町栄町。けがは、消防隊員18人、従業員10人、警察官2人。このうち、従業員の三浦健治さん(31)=同県太子町=が意識不明の重体。従業員と消防隊員1人ずつが重傷。

 姫路市消防局は午後10時35分ごろ、ほぼ火を消し止めたが、爆発したのとは別にトルエンなどが入ったタンク2基も焼けた。兵庫労働局は同日、労働災害対策本部を設置した。


日本触媒、爆発事故の事故調査委設置

日本触媒は5日、姫路製造所(兵庫県姫路市)の爆発事故を受けて事故調査委員会を設置したと発表した。安全工学の専門家など外部の有識者4人を含む計7人で構成する。近日中に1回目の会合を開き、事故の原因究明や再発防止策の策定に乗り出す。

 委員長には安全工学を専門とする田村昌三・東京大学名誉教授が就く。荒井保和・高圧ガス保安協会元理事も名を連ねている。日本触媒からは生産・技術部門を統括している尾方洋介取締役専務執行役員らが加わった。

 会合の日程などは未定としているが、同社は「できる限り早い段階で開催する予定」と説明している。



日本触媒、通報遅れで過去に3回行政指導 爆発事故 

兵庫県姫路市の日本触媒姫路製造所の爆発事故で、日本触媒が少なくとも過去3回、火災の通報が遅れるなどして市から行政指導を受けていたことが5日、姫路市消防局への取材で分かった。

 消防隊員ら計37人が死傷した9月29日の事故でも、従業員がタンクから白煙が上がる異常に気付いてから消防へ通報するまでに約45分かかったことが問題となっている。

 消防局によると、姫路製造所では、記録が残る1976年以降で計5件、爆発や火災などの事故が発生している。96年9月の爆発事故では、消防は近隣住民からの通報で事故を把握。市は施設の緊急使用停止命令を出し、保安体制の見直しを指導していた。2005年9月の火災では、消防に通報があったのは発生から約1時間後だった。

 石油コンビナート等災害防止法は特定の事業所に、火災や異常現象を把握した場合は早期に通報することを義務付けている。

 日本触媒は「手元に資料がなく、それぞれの案件について情報収集しているところだ」と話している。〔共同〕



「空白の50分」が焦点=通報遅れ、法令違反の疑い

消防隊員1人が死亡、重体の社員を含め36人が負傷した「日本触媒」姫路製造所(兵庫県姫路市)のタンク爆発事故から6日で1週間。県警は同社の安全管理に不備があったとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査を進めている。同社が最初に異常に気付いてから消防に通報するまでの「空白の50分」が焦点になるとみられる。

 先月29日午後1時ごろ、同社のオペレーターがアクリル酸を貯蔵するタンクから上がる白煙を発見した。ところが、「アクリル酸が異常反応して煙が出ている」と市消防局に通報があったのは同1時50分ごろ。この間の対応次第では事故を防げた可能性がある。

 消防隊が到着した時、既に同社の自衛防災隊が放水をしていた。現場では、社員が隊員に「最悪、爆発の危険がある」と伝えたという。消防隊が放水準備をしていた同2時35分ごろ、タンクは爆発した。
 有機化学の専門家らは、爆発前に確認された白煙は、分子同士が次々に反応して発熱する「重合反応」が急激に進み、沸点(セ氏141度)を超え気化したアクリル酸の可能性が高いと指摘。制御不能となって爆発したと推測する。

 石油コンビナート等災害防止法は、異常時は直ちに通報することを義務付ける。同社の池田全徳社長も記者会見で、通報の遅れなどについて「結果的に問題があった」と話すが、同社は遅れの理由を明らかにしていないが、下請けに対しては火災等の事故を直接消防等に通報するなどといった指示がされていたようだ。

 姫路製造所では過去約30年間で5回、火災やガス漏れがあり、通報遅れなどを指摘されていた。

 タンクの温度管理に問題があった可能性もあり、市消防局は通報遅れが法令違反に当たるかも含め原因調査を進める。ただ、現場では飛散したアクリル酸の処分が終わっておらず、県警と合同での現場検証のめども立っていないという。