入野上は生まれてこの方、幸運な男であった
恵まれた家庭、豊かな友人、愛すべき恋人にも出逢えていた
容姿は然程良いとは言えないものの、それでも人には好かれている方だった
彼の周りには、いつも人がいた

だがその幸は一刻の間に消え去った
圧倒的な光に包まれて

人類社会の終焉の後も、やはり入野上は幸運であった。
翼をはやした異形達に追いかけられても、仲間達が次々と死にゆく中、一人だけ生き延びることができた。
どうせ追いかけられるなら可愛いヒロインならいいのに…なんて呑気なこと思っていた。


そんな中、一人の男と出会った
男はただの人間ではなく、どこか「ヒロイン」の面影を有していた。
左の顳顬あたりに鶏冠のような物が生えており、どことなく豚にも似ていた。
しかし、思考回路や倫理観は人間のそれであった。

入野上は、この男に媚び諂うことにした。
この男は何者なのか、それはわからない。
だが死んでいった他の仲間達と比べると、明らかに異質だった。

なにか、起こる。

数々のフラグを回収してきた入野上だからこそ、そう思ったのだった。