「カルロ議員が死んだ」
滅多に姿を現さない自由気ままな友人。
三週間ぶりの再会の第一声は訃報まがいな言葉だった。
「更に、以下多数の人間が死んでいる」
つい先ほど開け放たれた窓の外では雪混じりの風が吹いていた。
凍てつく様な寒さとは裏腹に、手渡された紙の束は暖かい。
履歴書のように几帳面に記された個人書。
おそらく秘書が纏めたのだろう。
その裏には死因や事件当初の状況が事細かに書き留められていた。
「随分酷くやられてるね」
軽く目を通しただけでも、議会に参加していた半数の人間は死んでいた。
幾つかの見知った顔も、この世にはもういない。
「優、お前も気をつけることだな」
「心配してくれるの?」
大袈裟に驚いた上司の態度に、燈は眉間に皺を寄せる。
自分らしからぬ対応に、優の頭には何処ぞの友人が思い浮かんだ。
もう半年は会っていないので、多分恋しくなってるのだとふと優は思った。
「冗談だよ。気をつける」
そう言ってやると燈は大きくため息をつき、近くにあった椅子を引く。
見計らったかのように、先ほど火にかけた湯が沸いた。
「コーヒーか紅茶」
「紅茶」
カップに注がれた紅茶は、寒い部屋に湯気を立てる。
燈は一口紅茶に口を付けると、ふと手を止めた。
「そうだ、紅茶で思い出した」
燈はカップを静かに置くと、意味深げに間をあける。
「死んだ議員の家族に話を聞いてきたんだ」
「よく話をしてくれたね」
「その家で飲んだ紅茶が美味しくてな」
「それで思い出したの」
呆れた様に優は言った。
「重要なのはここからだ。死亡者の死因を見てくれ」
その言葉に優は先ほど目を通した資料に再度目を通す。
どの死因も心臓発作などの突然死だが、その他には何ら不信な点は見当たらない。
だが、それが逆に不信感を煽った。
「偶然に死ぬ数が多すぎる」
ここ三ヶ月の間に15人もの議員が自然死していた。
「面白い話を入手してな。」
にやりと燈は口角を上げた。
優はこの時初めて燈が面倒な土産を持ってきたと気がついた。
「死亡者の大半は死ぬ直前に不思議な夢を見た、と言っていたらしい」
まるで玩具を前にした子供のように、燈は笑った。