◎Slow Down
▼スロウ・ダウン
☆Larry Williams / The Beatles
★ラリー・ウィリアムス / ザ・ビートルズ
2015/11/29
ビートルズがカヴァーした曲のオリジナルをCDを買って聴いてみようという記事です。
今回のお題はSlow Down
Slow Downは4曲入りEP盤LONG TALL SALLYのB面1曲目として1964年にリリース。
ビートルズでのヴォーカルはジョン・レノン。
オリジナルはニューオーリンズ出身のR&B歌手ラリー・ウィリアムス1958年のヒット曲。
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ビートルズのカヴァーについて。
ジョンはラリー・ウィリアムスに心酔していたようで、ビートルズ時代にこれを含め計3曲を録音しリリースしています。
その中で最初に録音されたのがこの曲でした。
当時はビートルズのスケジュールが多忙で、レコードを出せというレコード会社からの要請も強く、シングルとアルバムの他に4曲入りEPも出すという始末。
ただ、このEP、ポール・マッカートニーが歌う表題曲、唯一のオリジナルでジョンが歌うI Call Your Name、これと、リンゴ・スターが歌うカール・パーキンスのMatchboxと、カヴァー曲が過半の割には人気も高く存在感も強い1枚ではあります。
曲は正統派R&Bであり強力なロックンロール。
僕が最初に聴いた印象は、いわゆるオールディーズと言われる古いポップスとは違う、まさに硬派なロックンロール、といったものでした。
ここで先ずはビートルズのヴァージョンをお聴きください。
中学時代に初めて聴いた僕、ジョン・の凄さがよく分かった曲でした。
ちなみに、この曲を僕が初めて聴いたのは、中学の頃に出た赤いカラーレコードのEP盤を集めた箱を買った時のことでした。
ジョンのヴォーカルが狂気すれすれ、恐ろしいほどの迫力があります。
特に間奏前の長いシャウトは、ジョン・レノンここにありといっところ。
間奏の後の3番はヴォーカルが崩れそうになっているのが真に迫っていて、ジョンはやっぱりロックンローラーだったんだなと。
ジョンはいつものようにダブルトラックで歌っていますが、1番0'50"の"fast"のところで2つのトラックの音が違ってコーラスのようになっているのは、意図したものなのかな。
2'26"の”Slow down"と言う部分も音が違いコーラスのような効果がありますが、ということは意図したものかな。
この曲はコーラスが入っておらずジョンの独唱ですが、ジョンのヴォーカルに任せたといったところでしょうね。
2番の1'13"のところは片方のトラックで歌詞間違ってますね。
まあ、気にしない、気にしない、人間臭くていい。
ただ、この曲のダブルトラックはズレが少なくてかなりうまくいっている方だと思います。
曲が終わる少し前にブレイクする部分。
1番では「アオッ!」と叫ぶ。
2番では「ブルル~」と震えるような声を出す、これが面白い。
ちなみに僕はこの曲を口ずさむ時も、これは真似しません(笑)。
その代わり「んーん」とかいいます、「マンダム」みたいな声・・・
ジョージ・ハリスンのイントロのギターはスライド奏法「のようなもの」。
よく考えてみればビートルズがスライド奏法「のようなもの」を取り入れたのはこの曲が初めてではないかな、今気づいたけど。
0'13"の辺りで音が怪しいのが昔から気になっていたんですが、まあそれも気にしない、気にしない。
間奏のギターソロもまだ若干たどたどしくはあるけれど、それも同じ。
ポール・マッカートニーのベースとリンゴ・スターのドラムスはグルーヴ感に徹していてあまり目立たない。
やっぱりここはジョン・レノンの独り舞台だからこそなのでしょうね。
イントロは30秒以上あるのに、最後は大きく動くギターフレーズとともにあっさりと終わってしまうのも、なんというか、潔い曲ですねぇ。
ところで、この曲の1番に出てくる歌詞に"Try to save our romance"というくだりがあるのですが、この"romance"という言葉がビートルズには不似合いな気がします。
まあ、だからどうということはない、あくまでも僕の感じ方ですが。
◇
本家ラリー・ウィリアムスは、Amazonでベスト盤の新品を注文。
上の写真のCDがそれですが、海外業者からの購入で、10日ほどで届きました。
ラリー・ウィリアムスは1枚買うとビートルズがカヴァーした曲が一気に3曲ゲインできるのはお得(笑)。
ではここで本家ラリー・ウィリアムスのヴァージョンをお聴きください。
大きな違いとしては、ビートルズからみてラリー・ウィリアムスやキィが高い、つまりジョン・レノンはキィを下げて歌っていること。
だからこそあのジョンの迫力につながったのでしょうね。
リズムも本家はスウィングしていますが、ビートルズは真っ直ぐなロックンロールになっています。
スウィングしているのは時代を感じますね。
後の言葉でいえば「ジャジー」な雰囲気。
ニューオーリンズつながりでファッツ・ドミノを思い出しますが、ファッツよりハードな音作り、ヴォーカルそして気持ちを感じます。
イントロのスライド奏法「のようなもの」はオリジナルにはなく、これはビートルズのアイディアということですね。
ジョージのものかな、いや、他の誰かかな。
間奏は時代を反映してサックスによるものです。
僕が注目したのはやはり、「ブルル~」の部分、オリジナルではどうなっているのか、でした。
なんと、本家はもう1回目で「ブルル~」と言っていました。
さらに3番でも披露してくれています。
でも、ジョンには2回あるのはやり過ぎ、と感じられたのでしょうね、1番と3番を「アオッ」と叫んでいます。
本家は逆に2番だけ「アオーッ」と叫ぶのですが、この声が猫なで声のように妙にソフトなのが気になります。
最後のビートルズがギターで弾くリフもサックスでほぼ同じ。
ビートルズは、いいところは積極的に残して、変えた方が自分たちに合う部分も積極的に変えている、ということですね。
オリジナルを初めて聴いていろいろ分かりました。
こういう聴き方も楽しいですね。
ちなみに、そのラリー・ウィリアムスのベスト盤には、ビートルズの3曲の他、ジョンがROCK 'N ROLLでカヴァーしたBonny MoronieとJust Becauseがありました。
つまりジョンは5曲も歌っていたわけで、ほんとうにラリー・ウィリアムスが大好きだったんだなあ、と。
また、ローリング・ストーンズで知られたShe Said, Yeahも入っています。
ラリー・ウィリアムスのこのベスト盤、実は結構気に入っています。
最初はまあ資料的なものとして何度か聴いて終わりかなと思っていましたが、知っている曲が多いということを差し引いてもかなりいい。
今は25連装CDプレイヤーに入りっ放しで、短い時間に音楽を聴く時間が出来た時に数曲とか、週に何度かは通しで聴いています。
こういう音楽との出会いも嬉しいものですね。
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今日は最後にそっと一言。
本日11月29日はジョージ・ハリスンの命日ですね。
今年は、ビートルズのこの曲にジョージへの思いを込めました。
決して忘れていない、いつもジョージのことを思っていると。
そして本日の身近な風景写真で終わらせていただきます。