◎MEET THE TEMPTATIONS
▼ミート・ザ・テンプテーションズ
☆The Temptations
★ザ・テンプテーションズ
released in 1964
CD-0115 2011/08/09
テンプテーションズの輝かしいデビューアルバム。
テンプテーションズ大好きですね。
ファルセットとバリトンという毛色の違う2人のリードヴォーカルを中心としたハーモニーは歌うことの楽しさが真っ直ぐに伝わってきます。
その上楽曲が素晴らしい、これ大事。
テンプスはアルバムもだいぶ揃ってきましたが60年代でまだ買っていなものがあり今月になって3枚立て続けに買いました。
その中のこれ、1枚目がいろんな意味で面白く興味深いので今日は記事に取り上げました。
テンプスはソウルの中のソウルという存在のアーティストのひとつだと思いますが、この1枚ではまだソウルとしてのスタイルが確立されていません。
試行錯誤の中でよいものを拾い上げてアルバムにしたという感じがしました。
気になったのは、エディ・ケンドリックスのファルセットヴォイスがまだまだ完成をみておらず曲によっては不安定に聴こえます。
例えばカントリー風のIsn't She Prettyはほとんどコミックというくらいに聞こえて最後までなんとか持ちこたえている感じ。
総じて声がすぅっっと上がった時に音が半音の半音くらい音符より低くなっているように聴こえるし、声が荒削りでがなるという感じに聴こえることもあります。
一方のデヴィッド・ラフィン、このアルバムのライナーノーツではDavis Ruffinと表記されていますが、ともかく彼は「ああラフィンだな」というところを早くも披露してグループを引っ張っています。
このアルバムは音楽的に面白いですね。
ソウルとしての自らのスタイルを確立するまでの段階にあってR&Bのみならずラテンやカントリーなどいろいろなスタイルの音楽に挑戦して1枚目から音の幅を広げようとしていることが感じられます。
そもそもこの頃はソウル自体がまだ発展期にあったのでこれはテンプスだけではなくすべてに言えることかもしれないですが、それにしてもいろいろやってみたという感じがします。
それをソウルとして包み込んでしまうまでにはまだ至っていないけど、逆にそこに音楽としての、誤解を恐れずにいえばロック的な面白さを感じました。
テンプスは自らのスタイルを確立した60年代後半以降にはサイケデリックやファンク路線それにコンセプトアルバムといろいろな音楽に挑戦し成功を収めています。
正確にいえば彼らは自作自演ではないのでソングライティングティームがいろいろな音楽を用意してそれを歌わされたというべきでしょう。
つまりテンプスはモータウンのスタッフの実験台となったわけです。
彼らが実験台としてフォー・トップスではなくテンプテーションズを選んだのは、テンプスの懐の深さと柔軟性に着目しこの人たちならやりたいことが何でもできるという手ごたえをつかんだからだと思います。
その期待に100%答えたテンプスはやはり表現者として超一流のグループですね。
先ほど「歌わされた」と書きましたがもちろんそんな受動的なことではなくグループには意欲的な人が集まっていたのでしょう。
ただ、変化する前に脱退したラフィンはソウルにこだわりたかったのかもしれないと、余談めいたことですがちょっと思いました。
今回の1枚目を聴いて早くもその萌芽を確かに感じることができました。
よく知らないでただ聴いていると60年代後半からの彼らの変化には驚いたり不思議だったりしましたが、デビューアルバムを聴いてそれも氷解しました。
ここにはまだベスト盤に入るような彼らを代表する曲はないけどそれはただそれだけのことでテンプスは最初から曲がいいことが分かります。
もちろんスモーキー・ロビンソンをはじめとしたソングライティングティームが期待を込めてテンプスにはいい曲を与えていたのでしょうけど。
しかしそれでもデビューアルバムの1曲目であるThe Way You Do The Things You Doは名曲ですね。
ホール&オーツのアポロでのライヴ盤でも歌っている曲だけに思い入れも強いですね。
ますますテンプスが大好きになりました!
ところで最後にもうひとつこのアルバムで気になったのが、デヴィッド・ラフィンがまだあのトレードマークのフレームが太い眼鏡をしていないことです。
当時はまだスターたるもの眼鏡を人前でかけてはいけないといったエンターティナーの暗黙の掟のようなものがあったのかもしれない。
しかし目立ちたがり屋のラフィンはそこを逆手にとって眼鏡をかけたところ人気者になった、なんて図式を想像してしまいました。
そういえばそうだ、テンプスより前で眼鏡で人気者になった人って、バディ・ホリーくらいしか思い浮かばない(笑)。