誰しも気持ちに波があって、やる気に満ち溢れている時もあれば、一日家に引きこもり何もしたくない時もある。
今日は何もしたくない日。
昨日は祖父母の家に遊びに行った。
僕が誕生日だから鰻を食べさせてくれるって言うからさ。1時間半かけて会いに行った。
実はお正月にも会ってるから2週間ぶり。
家に着くと二人とも孫が遊びに来たと嬉しそうに応対してくれた。
早速電話して出前を取ってくれた。
届いた鰻は立派で、分厚く、大きく、2枚も入っていた。
ちょっとタレの味が物足りないけど、脂が乗っててとても美味しかった。
鰻を食べ終わった後はお風呂に入ることにした。
お正月の時からお風呂をリフォームしたから入ってけとうるさくて、今日はお風呂に入るつもりでお泊まりセットを持ってきていた。
リフォームって言ったって床を張り替えたくらいで、感動するほどの変化ではないのに。
きっと少しでも長く家にいて欲しいからそう言うのだろう。
廊下をつたって風呂に向かう。
廊下の途中には客間の襖があるが、今は祖母の部屋になっている。
タオルがないことに気づき、客間に入って探すことにした。
カーテンは閉まっており、床には物が散乱していた。
無造作に置かれた洗濯物の山をかき分けるがタオルらしきものは見当たらず。祖母の服がミルフィーユのように重なっているだけだった。
僕がタオルがないと言うと、祖母はヨイショと言いながら自分に鞭打つようにして立ち上がり、一緒にタオルを探してくれた。
あっ!最近洗濯できてなかったからもうタオルないんだ!
と言った。
今までの祖母ならそんなことなかったのに。
世界で一番と言っていいほどの綺麗好き。
毎日きびきび動き、家は埃一つ見たことなかった。
タンスの上にあるものを使ってと言われ、タンスの上にあった箱をとった。
箱は埃まみれで、随分昔にもらったいただきものであった。
古びているが新品のタオルを使わせてもらうことにした。
お風呂には僕が前にプレゼントした入浴剤が入れてあり、桜の匂いをしたピンク色に染まっていた。
お風呂場のドアにカビが見える。
ちょっと前まではこんな光景、この家では許されなかっただろうに。
お風呂から上がりリビングを覗くと、うつむいてボーっとした祖母が見えた。
お風呂ありがとうと声をかけて部屋に入ると、いつもの笑顔の祖母に変わった。
よかった。
よかったのか。
帰りの電車で考えた。
欲というのは、一般的に下品に捉えられがちだ。
だって、食欲に囚われてメタボな人、性欲に囚われて風俗狂いの人。
卑しく見えるじゃないか。
でもね、なんにも欲がない人っていうのは人間的な魅力がないというか、活力がないというか、生命力を感じない。
何がしたい、何を食べたい、どこへ行きたい、
こういう気持ちって、生きる上で大事なんだと思う。
先々への希望(欲)があるから、今この瞬間を頑張る活力になるんだと思う。
あの家には、それがない。
全てのことに疲れて、どうにもならなくて、諦めた、そんな匂いがした。