私が免許取って半年経ったときの話。インフルが蔓延している時期であった。
突然祖母から「車をだせるか」と連絡がきた。
どうやら小学生の従弟が学校で体調を崩し、迎えが必要になったと。しかし共働きの叔父と叔母は迎えに行けない為祖母が迎えに行くことになった。徒歩で帰らせるわけにもいかないが、祖母は車も免許も無いので、免許持ち&暇人学生の私に白羽の矢が立ったのだった。従弟の学校もインフルが流行していた為、担任から、従弟を拾ったら直行で小児科に行く様に言われたらしい。
「私とあんたは万が一感染しても特に問題ないから」
祖母を拾って学校に向かっている最中、私を運転係に任命した真の理由を祖母は話してくれた。話さなくても良いだろと思った。
学校に着き、明らかに体調が悪そうな従弟を乗せてかかりつけの小児科に向かった。小児科到着後、外から見ても分かる程人が大勢いたので、祖母のみが従弟に付き添って入った。
おそらく1時間以上は待っていたと思う。ようやく祖母から「終わったよ。インフルだって。」と連絡がきた。
そして病院から祖母と従弟が出てきた。何故か、従弟は泣いていた。しかし理由を聞ける状況でも無いのでスルーした。
薬局に向かい薬を貰って、従弟宅に着いた。とりあえず従弟に薬を飲ませて寝かせた。
その後、祖母に「何で従弟は泣いていたのか」理由を尋ねた。
以下、祖母による診察時の様子である。
・診察室に呼ばれ、祖母が症状を説明した。そして医者は触診、その後インフルエンザの疑いがあるとみて検査をすると言った。
・医者は検査キットを持ってくるよう看護師に指示し「ちょっとお鼻の奥をこちょこちょするね」と従弟に検査内容を説明した。
・検査内容を聞いた従弟は、恐怖の為か突然暴れだした。「嫌だー!!」と叫んだと言う。
・あまりの暴れっぷりに医者も祖母も困惑。タイミング悪く看護師が検査キット持って戻ってきた為、状況は悪化。
・検査をする為看護師数人で従弟を取り押さえる事態にまで発展。祖母曰く「犯人確保の瞬間の様だった」との事。
・医者の卓越した腕前により、従弟の取り押さえから数分後に粘液採取が完了した。
・終了後、医者も看護師も全員息を切らしていたとの事だった。従弟は尚も泣き喚いていた。
以上、従弟が泣いていた理由であった。
院内に入るまで、従弟は明らかに元気がない、体調不良だと一目でわかる程に弱っていた。
それが幻かと思うくらい、暴れていたと、祖母は語った。
数日後、私はインフルエンザになった。しかし、あんなに付き添った祖母は一度も罹らず元気なままであった。