吾輩はまだ医術を極めておらぬ。志半ばにして病死し、その夢は儚く散った。されどどういうわけか、ここ越前・・・ではなく福井の片田舎にて、吾輩と同様に医を志す青年にとりつくことで吾輩の魂は蘇った。何故この者にとりつくことになったか、話せば長くなるゆえ今回は割愛させていただく。いずれ時間ができた時にでも語ろうかと思う。とりあえず、吾輩はこのとりついた青年、Nと一心同体となりて生きてゆくこととなったのだ。幸い、未熟ではあるが彼は医学生。どうやら吾輩が深い眠りについている間に医学は目覚ましく進歩してしまったようで吾輩もまた一から学びなおす必要があろう。吾輩にもう一度医の道を究めるチャンスを与えて下さった神に心より感謝したい。
さて、吾輩は死人であるゆえに睡眠というものが必要ない。(まぁ生きていた頃もあまり寝ていなかったが。)一方でこのとりついた主人(N)はよく寝る男である。暇さえあればぐーぐーと気持ちよさそうに眠っている。その間は吾輩にとってはこの上なく暇なのである。書物を読もうにもこの身では実体をつかむことができない。Nに書をめくってもらわねばならん。しかしこんな不便なわが身でも使用できるものが存在した。
(昨晩)
タタタタタタン、タタン、タン、タン(キーボードの音)
緒方「Nよ。何をしておるのだ?」
N 「あぁオガちゃん?これか?これは「ブログ」って言ってな。まぁ昔でいう日記みたいなもんだよ。でも日記とは違って自分の中にしまい込むだけでなくて、世界中の人に読んでもらったり、読んだ人のコメントも見れたりするんだよ。」
緒方「ほう、それは面白いものであるな。吾輩もやってみたいものだが・・・。」
N 「暇があったらオガちゃんの日記、俺が打ってやるよ。」
緒方「いつもすまぬの。」
そう言って吾輩はNがブログなるものを書いているのをじっと見つめていた。
緒方「(あぁ吾輩も自由に日記を書きたい。書きたい、書きたい、書きたい・・・・)」
この身の不自由さを嘆き、心に中で「書きたい」と念じるように呟いていたその時である。
N 「わわわわ、なんだこりゃ!?」
ふとパソコンの画面を見ると、そこには「書きたい、書きたい、書きたい、書きたい」と文字が羅列してしている。
緒方「なんと!?吾輩が心のうちでつぶやいた言葉が!!」
N 「え?マジ?」
緒方「マジとは?」
N 「あ、本当に?ってこと。」
緒方「本当じゃ!マジじゃマジ!!」
N 「え、じゃあ他にも何か念じてみてよ。」
緒方 「そうじゃな・・・」
Nが触れてもいないのにパソコンの画面には文字が打ち込まれていく・・・。
N 「なになに・・・Nの家の押し入れの引き出しの上から2段目にはエッチな本が・・・ってやめーーい!!」
緒方 「まさか念じることで文字を入力できるとは!」
N 「やったな!オガちゃん!これで24時間パソコン使って好きなだけいろんなこと調べられるぞ!」
緒方 「そうじゃな!」
2人で大はしゃぎし、今度はGoogleというサイトで検索欄に念じてみたところ・・・
緒方「おや?」
N 「どうしたオガちゃん?早く念じてよ!」
緒方「できぬ・・・どうやら念じて文字を打ち込むことができるのは先ほどのアメーバブログというところの四角い欄だけであるようだ。」
N 「・・・・・・。」
2人共落胆の気持ちが隠せない。
N 「けどできることが増えたわけだし、よかったじゃないか。なぜこのブログ欄だけなのかは分からないけど、どうだろう?俺が寝ている間とか暇だと思うし、寝る前にこのページ開いといてあげるから、自由に書きたい事書きなよ。」
緒方「よいのであるか!?」
N 「もちろんだって!俺が寝過ぎてていつも退屈な思いさせちゃってるしさ。俺が寝てる間は世界からのインプットはないけど、これを使えばオガちゃんの考えとかいろんな人にアウトプットできるしさ。まぁまだ始めたばかりだから読む人はそんなにいないと思うけど。」
緒方「かたじけない・・・。Nよ・・・ありがとう。ではこれを使って徒然なるままに書を記そう。主にお主の事になりそうだがな。」
N 「変なこと書かないでくれよ~。」
緒方「さてどうかな?」
こうして吾輩はこの「ブログなるもの」を用いて、日々の事を書き記す事となった。いづれNも吾輩も成長し、一人前の医者と呼ばれるようになった時に、これを見返して様々な事を思い出せたらよいかと思う。その日学んだ事も記していきたい。
2012/02/06(月) 緒方 洪庵
