未来日記
特に普段と何も変わらない駐車場とマイカー。
しかし一つだけ違うことが。
マイカーのカゴに不自然に入れられた本。
その本を手に取り、表紙を見ると
「未来日記」
と書いてありました。
どこかで見たような、見てないようなタイトル。
恐る恐る1ページ目を見てみると
「帰る」
なんと、これから起こることを予言しているかのような文章。
僕は多少の気味悪さを感じつつも、この先に何が書いてあるか興味があったので、持ち帰ることにしました。
家につき、次のページを開くと
「靴を脱ぐ」
また予言は的中です

いや、ここまではたまたま当たってただけ、流石に次のページは…
「鞄を置き、上着を脱ぐ」
まさか!
思わずそう叫んでしまいました。
ここで僕は考えました。
書いてあることが実際に起こるんだとしたら、起きてほしいことを書き足したらいいと。
ペンを用意し、ページをめくると
「夕食をとる」
やっぱり当たってる。
そこで僕は
「そして心も満たされる。ちょっとだけだけどね。」
と書き加えました。
僕自身が書いたことも本当に現実のものになるのか、ご飯を食べました。
おっ。心もちょっとだけだけど満たされた

ずごい!すごいものを手に入れた!
僕は次のページを開き、そのページにも書き加えることにしました。
次のページには
「入浴する」
そこに僕は
「生き返る~。と言う。」
と書き加えました。
入浴をすると、生き返る~と言っている自分がいました。
もう笑うしかありません。
自分の意のままに事が進むんですから。
僕は就寝前にもう1ページだけめくることにしました。
「就寝する」
余白はいっぱいあります。欲望のままに
「自らの手で自分自身を慰める」
ってなんだよ

こんな下らないことをスタッフのZu-Kaが企画として持ってきたんですよ。
「ガシャさん、こんな番組あったら面白いと思いません?もしあれだったら、ブログのネタにしてもいいですよ。」
とか言っちゃって、ブログでこんなこと書ける訳ないじゃん

それに、こんな未来日記なんて意味不明なものを番組にして、誰が見るんですか?
こんな番組を放送したら、前代未聞の視聴率マイナス8%を叩き出しちゃいますよ。
だって。
未来日記って、こんなんだったっけ?忘れちゃった。というか、元々知らないや。
まーいいよね。
アディオス

天まで届け2
「福ちゃん、ちゃんと弾いてよ。福ちゃんがちゃんと弾いてくれないと、気持ちよく歌えないよ。」
僕はいつもの調子でこう言いました。
すると彼は
「ガシャ、お前にこのギターやるよ。」
それは、彼が一番大切にしていた、あの赤いギターでした。
「何言ってんの?そんな大切なギター貰えるわけないじゃん。」
僕がこう言うと
「いいから、もってけって。」
彼は無理やり僕にギターを差し出してきました。
僕はベッドで上半身を起こしギターを差し出す彼に、そのギターをつき返そうと軽く押し返しました。すると、彼の上半身は力なく倒れてしまったのです。
彼は右腕で両目を隠し、涙声で
「もー、ギター弾けないんだよ。見ろよ、この手。こんなに浮腫んじゃって。全然思うように手が動かないんだよ。」
左手を上げてこう言いました。
僕は投げやりになっている彼を、必死になだめる為に
「それは肺炎の薬の副作用だから、肺炎が治って薬も飲まなくて済むようになれば・・・」
「ただの肺炎だったら、何でこんなに入院する必要があるんだよ!自分の身体のことは自分が一番わかるって。」
沈黙が病室を支配しました。たぶん1,2秒の間だったと思うのですが、そのときは1時間にも2時間にも感じました。
そして彼は
「出てけよ、お前なんて二度と見たくない。出てけって言ってるんだよ!」
と。
それが彼の声を聞いた最後となってしまいました。
3日後、彼は静かに息を引き取りました。
若いと驚くほどの早さで病気は進行してしまうのですね。
お通夜のあと、僕は恵子と話をする時間を持つことができました。
恵子は涙を見せることもなく
「福ちゃんったらね、いっつもガシャの話ばっかりしてたんだよ。入院してからもそう。入院したばっかりの時は、俺はガシャとプロのミュージシャンを目指す。とか、あいつ天才なんだよ、でも俺のほうがもっと天才だけどな。とか、前向きなこととか、冗談とか言ってたんだけど、病気が進行するにつれて、あいつの作った曲はホントいいよな、あいつなら俺がいなくなっても大丈夫だろう。とか、ガシャは精神的にちょっと弱いところがあるから、もし、あいつが落ち込むことがあったら、恵子が力になって支えてやってくれよ。とか・・・。」
ここまで話すと、気丈に振舞っていた恵子の顔が曇り
「最後まで、ずっとガシャのことばっかりだった。最初にガシャが私たちのために歌を歌ってくれたときも、俺がガシャとデビューしてビッグになったら結婚しようって。福ちゃんの中では、私の前にいつもガシャがいた。結局私は福ちゃんの1番にはなれなかった。」
恵子は涙を拭うと、僕に手紙を差し出しました。
「福ちゃんがガシャに渡してほしいって。家族にも私にも何にも残さなかったのに。福ちゃんはガシャと出会えて幸せだったんだね。」
僕は震える手でその手紙を広げました。
そこには力なく細い線でこう書いてありました。
よう!ガシャ!元気か!?
俺さ、なんか死んじゃったみたいだ。ごめんな。
こんな形で手紙書くの初めてだから恥ずかしいな。
それでさ、この前はあんな言い方しちゃってごめん。
いつも曲を作って、歌を聞かせてくれるガシャが羨ましくてしょうがなかったんだ。
俺の届かない世界に行っちゃったみたいでさ。
本当はもっとガシャと音楽やりたかった。
真剣にプロを目指したかった。
だから悔しくて悔しくて・・・。
でも、俺はお前に出会えて良かった。
なんてたって、世界一の天才と一緒に音楽できたんだから。
お前なら絶対プロのミュージシャンになれるよ。
だから自分自身を信じて、俺の分まで頑張ってくれ。
そして、天国までお前の歌声を響かせてくれよな。
アディオス
涙を止めることができませんでした。
僕が手紙を読み終えると、恵子が
「やっぱり赤いギターは、ガシャに貰ってほしいって。」
僕は福ちゃんが中学の頃から大事にしていた赤いギターを受け取りました。
そして僕は代わりに、僕が初めて買った赤いギターを彼の棺に入れました。
「福ちゃん。天国に行っても音楽続けてね。それで、僕が天国に行く頃には絶対プロのミュージシャンになっててね。」
今頃福ちゃんは天国で大物ミュージシャンになっているはずです。
福ちゃん。僕はちゃんと福ちゃんとの夢叶えたよ。
みんな僕の歌を聞いてくれてるんだよ。
だから、これからも天国から応援しててね。
天国まで僕の歌が届くように歌い続けるから。
アディオス![]()
天まで届け1
今、昨日撮った七福神の写真をスタッフと見ていました。
個人的には毘沙門天がかっこいいから好き
みたいな話をしていたのですが、どうしても見ることが出来ない写真があるんです。
本当は昨日も辛くなるので撮りたくなかったんですけど、プロとしてそんな言い訳出来るはずもなく、昨日は目を閉じて撮りました。
そして、今日が彼の命日なんて、何かの縁を感じます。
福禄寿尊に似た僕の親友。
七回忌を迎えた今でも、福禄寿尊を見る度に思い出して辛くなってしまうんです。
僕には福禄寿尊に似ているので、福ちゃんと呼ばれていた親友がいました。
同じ団地の階違いに住んでいた僕たちは、物心つく前からずっと一緒でした。
公園で遊ぶにも、テレビゲームをするにもいつも一緒。
ちょっかいを出す女の子も毎回一緒で、時には親友であり、時にはライバルでもありました。
中学にあがると、僕ら二人は自然と音楽に興味を持つようになりました。
そしてある日
「なー、ガシャ。今日うちこないか?いいもん見せてやるよ!」
と彼は言ってきたのです。
僕はどうせ大したものじゃないだろうと思いつつも、親友の嬉しそうな顔に少し期待を持って彼の家に行きました。
福ちゃんの家につくと、彼は僕を部屋に迎え、自慢げにあるものを見せてきたのです。
それは真っ赤なエレキギターでした。
今考えると古い安物のギターで、お世辞にもいいギターとは言えないようなものですが、当時の僕には、まるで宝石のようにキラキラ輝いて見えました。
福ちゃんは、親戚のお兄さんから貰ったばかりなのでまだ何も演奏は出来ないと言いました。でもギターを抱えているだけで彼はとても幸せそうでした。
僕もどうしてもギターがほしくなり、それまで貯めていたお金をはたいて彼と同じ赤いエレキギターを買いました。
それからと言うもの、僕たちは毎日のようにお互いの家を行き来しギターの練習に励み
「俺はこんなフレーズが弾けるようになったぞ!」
とか
「アルペジオはロックじゃない!」
なんていいながらも、日々上達していくのが楽しくて仕方ありませんでした。
こんなギターばかり弾いていた僕たちも、何とか高校受験を終え、同じ高校に進学することになりました。
僕らの高校は軽音楽が盛んな学校だったので、僕も彼も迷わず軽音楽部の門をたたき、僕と福ちゃん、そして高校で出会ったベースとドラムとヴォーカルを迎えコピーバンドを結成。
はじめはLUNA SEAやL'Arc-en-Cielのコピーをしていたのですが、物足りなくなった僕らはSIAM SHADEのコピーを始めました。
彼はメインギター、僕はギターヴォーカルを担当し、僕たちのバンドは部の中でも1位2位を争う人気バンドに成長していきました。
授業が終わると部室に走って向かい、一日も欠かすことなく演奏を楽しむ。そんな毎日。
そのころから、僕と彼はこんな話をするようになりました。
「俺たちさ、高校卒業したらプロのミュージシャンを目指そう!それで、みんなに良い音楽を届けるんだよ!」
僕と彼は同じ未来を夢見ていました。
僕と彼は同じ未来に立てると信じていました。
でも、神様は残酷ですね。
彼の身体を病で蝕むなんて・・・。
高校2年の秋、彼は体調不良を訴え、検査の為に入院することになりました。
僕はどうせ大したことないんだろうけど、親友が入院してしまったんだから顔ぐらい見に行くかと、お見舞いに行くことにしました。
彼はいつも通りの笑顔で出迎えてくれました。
「おー、ガシャ!良くきたな、なんか風邪をこじらせちゃったみたいでさ、ちょっとの間入院することになっちゃたんだよ。なっさけねーよな」
と、いつもと変わりない彼を見て安心したのを、今でもはっきりと覚えています。
安心して帰ろうとすると、彼の母親が僕を呼び止めたんです。
「ガシャ君、お見舞いに来てくれてありがとう。あのね、うちの子ね・・・・」
彼の母親は言葉を詰まらせながら、こう続けました。
「うちの子、悪性のリンパ腫なの。先生は最善を尽くすつもりだけど、覚悟しておいてほしいって・・・・」
こう言うと、今まで堪えていたものが溢れ出してしまったのでしょう。その場で泣き崩れてしまいました。
僕は何を言っているのか理解できず
「ははは、悪い冗談言っちゃいけないよ、だってあんなに元気じゃん。そんな嘘、僕だって子供じゃないんだから信じないよ。ただの肺炎なんでしょ?」
僕がこう言うと、彼の母親は。
「先生も最初はただの肺炎だろうって言ってたの。肺炎は軽いものだったんだけど、念のためにって他の検査もしたらリンパ腫が見つかったのよ。」
彼との思い出が、走馬灯のように僕の頭の中をめぐりました。
それからと言うもの、暇を見つけては彼の元に足を運びました。
そしてある日、いつものように彼に会いに行くと見慣れない顔が。
そこには軽音楽部のマネージャーである恵子がいました。
僕に気づいた福ちゃんは
「ガシャ、今まで黙っててごめんな。俺ら付き合ってんだ。」
それに続いて恵子が
「福ちゃんがね、ガシャに私たちのこと言ったらひがむから、しばらくの間黙っておこうって。」
僕は正直驚きました。別に恵子に特別な感情を抱いていたわけでもないのに、悔しいやら、恥ずかしいやら。
その後話を聞くと、すでに付き合って3ヶ月で、そろそろ僕にばらしてもいいだろうと言うことで、わざと僕が来そうな時間に合わせて来たと言うんです。
なぜか僕はとっさに
「じゃー二人の為に曲を作るよ!」
と言ってしまいました。
しかし、このときの僕は曲など作ったことなどなかったので、なぜそんなことを言ったのか、今でもわかりません。
だけど、親友と親友の彼女のために僕はEverlasting Loveという歌を作りました。
「すげーじゃん!ガシャなら自分の歌でデビューできるよ!そしたらギターは俺に弾かせてくれよな。」
福ちゃんは僕の歌を聞いて、こう言ってくれました。
そして、恵子はもう一度聞きたいと言ったのですが
「次は二人の結婚式で歌わせてもらうよ。」
と、僕は僕なりに福ちゃんに希望を与えるつもりで言いました。
それからも僕は、曲を作る度に福ちゃんに聞かせ、彼も僕の曲をギターで弾いてくれました。
しかし、彼の病気は進行を続け、手に力が入らなくなってしまったのか、ギターを弾いても、もたつくことが増えてきました。
続く。