こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日も想像力と007クロニクルというテーマで
007/私を愛したスパイ(1979)
(原題:MOONRAKER)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★想像力と007クロニクルとは?
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本作は1979年に公開された007シリーズの第11弾。
1977年に公開された前作「007/私を愛したスパイ」は世界的大ヒット作となりましたが、前年ながら同年最大のヒット作にはなりませんでした…
理由は映画界にとって1977年は宇宙を舞台にした「未知との遭遇」と「スターウォーズ」が大ヒットした年だったから!
1968年の「2001年宇宙の旅」以降最大の話題作となったつの2作品以外にも「スーパーマン (1978)」「宇宙空母ギャラクティカ (1978)」「スター・トレック (1979)」「エイリアン (1979)」などが次々と公開されてゆく中、007のようなスパイ映画は、時代遅れの作品とみられるようになってしまいます…
1977年はSF映画ビックバンの年!!
「スターシップ・インベーション」も1977年!
ですが007シリーズは第一作目の「ドクター・ノー」の時から、宇宙ロケットを題材にしており、以降も人工衛星、弾道ロケット、米ソの宇宙開発競争などをテーマにした作品が多く、製作者であるユナイテッド・アーティスツ社としては「007シリーズこそが宇宙を舞台にした映画の王者であるべきだ」という想いがあったのではないかと推察されます。
第一作目はアメリカのロケット発射を
妨害する敵が登場する作品です。
ですので「私を愛したスパイ」の次に製作された本作は、007シリーズとしては満願成就の宇宙を舞台にジェームズ・ボンドが大活躍するSF活劇を目指したものとなっていたのです!!
「宇宙映画を制するのはボンドだ!」
と言わんばかりの別バージョンのポスター。
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
…ハイジャックされた有人宇宙連絡船“ムーンレイカー”??
はい。
前述しました通り本作は、007が初めて宇宙で活躍する事を目的に作られた作品ですので、当然ですが登場人物たちが宇宙に行くためのロケットが必要になります!
本作に登場する宇宙ロケットは、当時まだ試験飛行しかしていなかったスペースシャトル!
1977年に公開されたスペースシャトルの飛行実験の写真は、ジェット機の上にスペースシャトルが乗っているというキャッチーなものだったのですが、この写真から着想を得た本作は「この飛行実験の時にスペースシャトルが何者かによって強奪されてしままたら?」というシチュエーションで作られたスパイ映画となっているのです。
スペースシャトルの輸送は
親亀の背中に子亀が乗る方式!!
スペースシャトルの輸送方法はコチラ!
本作の冒頭は、このシーンを映像化!!
イギリスはアメリカから貸与してもらったムーンレイカー(本作でのスペースシャトルの呼称)を輸送中に奪われてしまったのです!!
飛行機の上でエンジンを点火され
飛行機は大破してしまい
ムーンレイカーは行方不明に!!
ムーンレイカーの捜索を命じられたボンドは、シャトルを製造したヒューゴ・ドラックスという人物に会うためにカリフォルニアへ向かいますが、ヒューゴは中世ヨーロッパの屋敷を再現したような邸宅に住む奇妙な男で、ボンドはヒューゴと会った瞬間に、彼は何かを隠していると察知し、深夜ヒューゴの書斎に忍び込んで金庫の中にある書類を読み、ムーンレイカーに搭載するための特殊なガラスをヴェニスで作らせている事を知り、ヴェニスへと向ったのです!
ん?
会っただけで不信感!?
はい。
本作は120分という上映時間の中でボンドを宇宙に行かせなくてはならないため、途中のストーリーはジェットコースターのように猛スピードで進行して行きます!
と言っても、これまでのシリーズで積み重ねて来た娯楽要素は全て健在!!!
娯楽要素1.アダルトなテイストのオープニング!
娯楽要素2.世界平和よりアバンチュールを優先する007!
映画の冒頭、プライベートジェット内で
CAと関係を持とうとする007!
美女がいれば見境なしのムーア版ボンド!
娯楽要素3.インパクトのある変な敵!
ヴェニスで無人ゴンドラの棺桶内から
突如襲って来る謎の殺し屋!
瞬殺されますがインパクトは抜群です。
娯楽要素4.ボンド・ガールはセクシー系の美女!
ヒューゴの元にNASAから派遣された
グッドヘッド博士が今回のボンドガールですが
とてもNASAの職員とは思えません!
名前もまちがいなく偽名です
娯楽要素5.アクロバティックな複数回のチェイス・シーン!
今回のチェイスは、
空中でのパラシュート争奪戦!!
あれ?
前作の敵ジョーズがいる!?
娯楽要素6.Qの出張兵器開発サービス!
何故か世界各地の秘密基地で
秘密兵器開発しているQ!
今回はリオデジャネイロ!!
あれ?
全然、宇宙に行く気配がないんですけど…
さて、果たしてボンドは今作で本当に宇宙に行く事が出来たのでしょうか?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
カリフォルニア → ヴェニス →
リオジャネイロ → アマゾン奥地!
本当に宇宙に行けるのか!?
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、本作は残念ながら、観客の評判があまり芳しくない作品。
その理由は、ここまでの解説で何となく察して頂けると思いますが、リアリティが欠如した荒唐無稽な作品になってしまっていたからなのです。
ですがユナイテッド・アーティスツ社の名誉のために弁護させて頂きますが、本作は決して荒唐無稽な作品を目指して作られたものではなかったのですが、本作が公開された1979年の時点で、スペースシャトルはまだ宇宙に到達していなかったため、作中の宇宙シーンは、SF小説や映画などをベースにして作られたリアリティのないものとなってしまっているのです!
そう。
古人曰く、二兎を追う者は一兎をも得ず。
「未知との遭遇」や「スターウォーズ」や「ブレードランナー」は、架空の世界を映像化したものですので、観客もバーチャルな世界の出来事として楽しむ事ができたのですが、リアルな世界での活躍を描いたジェームズ・ボンドに、架空の世界を持ち込んでしまうと、観客は現実とフィクションのどちらかの視点を選択しなくてはならなくなり、結局はどちらの視点からも不満の残る結果となってしまったと考えられます。
また、これまで007シリーズを作る上で重要視していた、観客の求めているシーンを盛り込むというサービス精神も、本作ではマイナス要因として働いてしまいます!
変な怪人を登場させたり、チェイスを用意したり、Qの発明を見せたりするシーンに時間を取られてしまった結果、本作でボンドが宇宙に到着するのは映画のラスト30分!!
たった30分ので宇宙での出来事を解決してしまった本作は、ポスターを観て作品内容を期待していた観客を裏切る事になってしまったのです…
あまり知られていないこのポスターが
一番内容に合っている気がしています😉
私見ですがそんな本作は宇宙ステーションに陣取って世界滅亡を画策している狂気の権力者に立ち向かう007の姿を描いた作品であると同時にコンテンツを作る際に複数の目標を達成しようとすると、どちらの目標にも満足行く結果を残せない、中途半端な作品になってしまうといマーケティングの実例を学ぶ上でも参考になる作品としても観る事ができるのではないかと思うのですが、皆様はどう思われるでしょうか?
ちなみに本作以降、007は決して宇宙に行く事はなく、あくまでもリアルな世界で起こった出来事をテーマにしたスパイ映画となってゆくのです…
尚、本作終盤で描かれる
「サンダーボール作戦」に似た
集団での戦闘シーンは
かなりしっかりと作られたもの!
ですので決して本作は
荒唐無稽な作品なのではなく
観客へのサービスと
まだ誰も観た事がなかった
スペースシャトルの活躍を
空想で描こうとした
結果だったのだと思われます…
という訳で次回は
ムーア版ボンド第二の頂点へ!
というテーマで
007/ユア・アイズ・オンリー
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たリアルなスペースシャトル映画
「スペース・キャンプ」
「スターウォーズ」が大ヒットした
70年代末期のSF映画ブームは、
1981年にスペースシャトルが
宇宙を舞った事で頂点に達し、
宇宙映画の百花繚乱時代を迎えます😆
そんな夢いっぱいの80年代に作られた本作は、
「宇宙でキャンプするSF映画」
のように思われてしまうかもしれませんが、
実際の内容はNASAが主催していた
子供のための宇宙飛行士模擬訓練施設を
舞台にした若者たちの成長を描いた作品!
80年代のNASA訓練施設が観る事が出来る
貴重な作品なのですが、
映画の公開直前にスペースシャトル
チャレンジャー号爆発事故が発生し、
興行的には成功しなかった作品と
なってしまったのです…