こんばんは。
ご覧頂きありがとうございます😊
本日もグラインドハウス今昔物語というテーマで
マーダー・ロック(1985)
(原題:MURDER-ROCK: DANCING DEATH)
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
★グラインドハウス今昔物語とは?
ルチオ・フルチ監督作品を立て続けに4作品連続(前シリーズの「シルバー・サドル」と「荒野の処刑」を合わせると6作品連続!)でお送りして参りましたが、本シリーズはルチオ・フルチ監督作品特集という訳ではありません
ですが、別のテーマでルチオ・フルチ監督作品をご紹介する機会は、なかなか存在しないと思いますので、あと2作品だけお付き合い頂ければと思います😊
残る2作品はクトゥルー神話とは関係なく、同時期のブライアン・デ・パルマ監督による「ボディ・ダブル」や「殺しのドレス」などの作品に似たテイストの先進国アメリカに住む若者たちの心の闇を描いた1980年代スラッシャー映画!!
尚、ルチオ・フルチ監督のホラーやサスペンス映画のポスターは、本作を含めて"黒い背景に黄色のロゴ"が印象的なものばかり!!
↑「マンハッタン・ベイビー」
↑「ビヨンド」
↑「サンゲリア」
ですので、もし作った監督が分からないホラーやサスペンス映画があったとしても、黄色と黒のコントラストのポスターが存在するのなら、それはルチオ・フルチ監督作品なのかもしれないのです😁
↑次回ご紹介予定の「怨霊界エニグマ」も
「黄色と黒のルチオ印」なのです!
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば本作の解説は以下の通り。
「エマーソン、レイク&パーマー(ELP)」は、美しく幻想的な旋律を得意とするプログレッシブ・ロックの超有名バンド!!
↑「恐怖の頭脳改革」等の名盤多数のELP!!
そんなELPのキース・エマーソンが担当した映画の冒頭に画面に流れる音楽は80年代っぽいPOPなダンス・ミュージック!
↑テンポの良い80'ダンスミュージックの「Streets to blame」!
曲に併せて激しいダンスを踊るのは、マンハッタンにある名門ダンス・スクールで、明日を夢見て研鑽を積んでいる女の子たち!
↑映画の舞台となるダンス・スクールには
デビューを夢見る才能ある少女が集まっています!
ある晩、このダンススクールのシャワー室内で女子生徒スーザンが殺されてしまいます!
事件が起こったのは学校が閉館する10分前!
当時、生徒の帰宅を促すために天井のライトが明滅していたため、犯人が誰なのかは観客にも分かりませんが、シャワーを浴びていたスーザンは、麻酔薬で昏倒させられた後、ピンのような長い針で刺殺されてしまったのです!!
↑明滅するシャワー室で起こった刺殺事件!
スーザンの死を知り、集まって来た学生たちは涙にくれますが、ダンスの才能に恵まれていたスーザンは、翌週に控えた舞台出演のかかったオーディションで選考確実と言われてきた3人の中の一人!
今回のオーディションでは、3名しか選ばれない事となっていましたので、スーザンの死によって枠は一つ空いた事となります…
↑スーザンの死を悲しむ仲間たちですが
デビュー枠が一つ空たのはチャンスでもあります
という事はスーザンを殺したのは、3人の選考枠を狙った女生徒??
ところがスーザンが死んだ直後、選考確実と言われていたもう一人の実力者ジャニスも、自室で刺殺されてしまったのです!
↑選考される3人と噂されていたのは
スーザン、ジャニス、ジルの3人でしたが
2人は殺されてしまいました
むむむ。
もしオーディションに受かりたい学生が犯人だとしたら、3人のうち2人も殺すのはおかしいですね
さて、果たしてこのダンススクール連続殺人事件の真犯人は一体誰なのでしょう?そして犯人の目的とは?
それは是非、皆さん自身の目でご覧になって頂ければと思います。
↑犯人は、ジャニスの可愛がっていた小鳥も
無慈悲に刺殺した異常者でした
皆様がご覧になる楽しみを奪わないよう、これ以上詳細を書く事は差し控えさせて頂きますが、ルチオ・フルチ監督が80年代に作っていたクトゥルー神話とは違い、本作はニューヨークに住む人々の心の中に巣くっている心の闇を描いたサスペンス!
超常的な怪異であるクトゥルー神話を映画化した「サンゲリア」「地獄の門」「ビヨンド」「マンハッタン・ベイビー」では人間に手を下すのは、人間ならざる者たち!!
↑人間は怪異の犠牲者となっていきます!
けれど本作においては、女性徒たちを殺害するのは人間ですので、人間が人間を殺害するようストーリーが変化しています!
…このような監督の心境の変化は、一体どうしてなのでしょう?
残念ながらルチオ・フルチ監督は1996年にご逝去されておりますので、この心境の変化については、我々の想像に委ねられる事になるのですが、私見としては、イタリア人でありながらニューヨークを舞台にした作品を取り続けたルチオ・フルチ監督は、人々の物欲が拡大し続けていた80年代のアメリカの中に、クトゥルー神話以上の恐怖を感じていたのではないかと思います。
そう。
80年代のアメリカは、メディアの台頭によるエンターテイメント全盛の時代!!
これは私見ですが、70年代にマカロニ・ウェスタンを通して、ヨーロッパに比べて信仰心が薄いアメリカの無慈悲な世界を描いたルチオ・フルチ監督は、80年代初頭に、邪悪な存在によってアメリカ人が破滅する映画を撮り続けた後、80年代後半には、欲望を制御しきれなくなったアメリカ人同士が殺し合うシリアル・キラーの世界へと傾倒していたのではないかと考えております。
↑神無き西部の世界を描いた70年代の「荒野の処刑」では
無力な人々は助け合っていましたが…
↑邪悪な存在に侵攻された80年代初頭の「地獄の門」では
人々は知らぬ間に破滅に導かれ…
↑そして80年代後半の本作においては
欲望のために人が人を殺すようになるのです!
ルチオ・フルチ監督は、「死」をテーマにした映画を突く続けて来た監督!
そんな監督の生死観はきっと、今自分が観ている世界に呼応するよう変化していったのではないかと思うのですが、皆様はどう思われますか?
↑ちなみに1991年に作られた
日本未公開作品の「ナイトメア・コンサート」は
監督自身が主人公となり
彼が殺人者に仕立て上げられる
という内容のようです(やっぱり黒と黄色!!)
ルチオ・フルチ監督の90年代の生死観は
一体どんなものだったのでしょうか?
是非DVD化して欲しい作品なのです 🎃 😈 💀
という訳で次回は
まだ伝えていなかった事
というテーマで
怨霊界エニグマ
という映画を解説してみたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします😘
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
★おまけ★
併せて観たいグラインドハウス系映画
「殺しのドレス」
映画の中盤で、映画の主人公だと思っていた女性が、突然襲って来た謎の女にメッタ刺しにされて死んでしまう!というトリッキーな展開は、アルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」という作品にインスパイアされたもの!
映像の魔術師ブライアン・デ・パルマ監督の、凝りに凝った撮影技法と、歪んだ心理描写は、「マーダー・ロック」と同じ80年代のニューヨークを舞台にした、人間が人間を殺害する映画なのです!