こんばんは
ご覧頂きありがとうございます
\(^▽^)/
本日も
想像力と
発掘良品の発掘
というテーマで
アメリカを斬る
という映画をご紹介したいと思いますので
どうぞよろしくお願いいたします。
カメラマンの眼差し
本作は、撮影監督として有名な
ハスケル・ウェクスラー氏が監督された映画!
ハスケル・ウェクスラー氏といえば
セレブや裕福層ではなく
ごく普通のアメリカに住む人々を淡々と
けれど美しく撮った映像が多く
庶民に眼差しが向いていたカメラマンでした。
↑精神病院に収監された患者たちの
豊かな人間性を描いた「カッコーの巣の上で」。
↑人間味あふれる優しい娼婦が
罪もないのに陰謀に巻き込まれ殺されてしまう
「狼たちの街」。
そんな庶民派のウェクスラー氏が
映画監督として撮ったのは生涯で2作品だけ!
その中の1本である本作は
1969年という特異な時代の中で翻弄される
アメリカの人々を描いているのです!
↑日本版ポスターには
「ジョンもアイリーンもマスコミが殺した
そして、鳩も少年も居なくなった…」
という意味深なコピーが!
アバウトなストーリー
「キネマ旬報社」さんのデータベースによれば
本作の解説は以下の通り
現実の断面し示す数々の事件を明滅させ、
そこに今日のアメリカと若者の姿を見ようとした作品。
はい。
この解説の通り、本作は撮影された
1968年当時のシカゴの日常風景を撮りながら
その渦中にいた人々にスポットをあて
1968年頃のアメリカの若者たちの空気を描いた
ドキュメンタリータッチの作品!
ですので、本作を観る際には
あらかじめ1968年当時のアメリカの状況を
ご理解頂いて下さると
描こうとしているテーマが見えてきます!
本作で描かれるているのは
若者たちの目指していた平和革命運動が
挫折しつつある光景!
↑平和革命は、もう終わりですね…
主人公でニュース・カメラマンのジョンは
シカゴのTV8という放送局で
番組作りのために街を日々奔走しています。
↑おっ、ハイウェイで交通事故発生!
とりあえずフィルムに収めろ。
警察や病院への通報は撮影が終わってからだ!
ジョン・F・ケネディが暗殺され
平和を望む市民と軍や州兵がぶつかり合い
ピリピリとした空気ですが
ジョンの仕事は、どこかのんびりした感じ。
デモの様子を撮影しても
スラム街や、黒人問題を撮影したとしても
TV局は体制側なので
あまり刺激的なニュースにはしてくれず
インタビューされた市民側も
TV局に勤めるジョンに不信感を持っています。
↑何度も車を壊されたりホイールを盗まれるジョン。
TV側にいるジョンは
裕福な人間側だと見られているのです!
そんなある日、ジョンはTV局の上層部によって
自分の取材映像が放送される前に
政府や警察によって閲覧されている事を知って
激怒して上司に怒鳴りこんだ結果
解雇されてしまいます!
↑経営者に従わないのなら、お前はクビな!
その頃、政情はさらに不安定化し
キング牧師やロバート・ケネディが凶弾に倒れると
シカゴで行われていた民主党大会に
反戦運動家が多数集結し会場を取り囲み暴徒化し
流血の大惨事となっていくのです…
1968年にシカゴで実際に起こった
「シカゴ民主党大会流血事件」!
さて、その渦中にいたフリー記者となったジョンは
一体、どうなってしまうのでしょう?
それは是非、皆さん自身の目で
ご覧になって頂ければと思います。
↑暴徒に解散を命じた警官隊は催涙ガスも噴霧!
緊迫していく現場で、ジョンは一体どうなってしまうの!?
カメラマンの無念
先ほどねご説明した通り
監督されたハスケル・ウェクスラー氏の本職は
映画の撮影監督!
↑ハスケル・ウェクスラー氏
常にカメラを持ち歩き
1968年当時の映像を現場で撮る事ができた
ウェクスラー氏だからこそ感じたのは
恐らく、TVやメディアには
人々を動かすほどの力がないという辛い現実。
彼らがどんなに衝撃的な映像を撮っても
人々はショックを受けても
日々の自分の行動を改める事はなく
場合によっては
その映像から目を背けてしまいます!
↑ジョンの部屋に飾られているのは
南ベトナムで、捕虜をいきなり射殺した警官の映像。
相当ショッキングな映像ですが
だからと言って多くの人々の行動に変化はありません…
また、劇中ジョンの恋人は
ヤコペッティ監督の「世界残酷物語」を引用して
放射能で方向感覚が狂ったカメが
海に向かわず陸に向かって行って死ぬシーンで
どうしてカメラマンはカメを助けないの?
とジョンに問いかけますが
ジョンは、イタリアのカメラマンの事は知らないと
サラっとかわしてしまうのです
↑何でカメが死ぬまで放っておくの?
(「世界残酷物語」より)
はい。
お察しの通り、ジョンは世界残酷物語が
やらせである事が分かっており
TVで流される映像が本物とは限らない事も
自覚してしまっているのです…
本作の原題は
MEDIUM COOL
(ミディアム・クール)
MEDIUMは恐らくメディアという意味なので
COOLはカッコいいではなく
冷たいとか、冷酷とか、暖かみがないという意味。
ベトナム戦争、公民権運動、
そして平和運動等の渦中でカメラを持ち歩き
あらゆるもの撮っていた
ハスケル・ウェクスラー氏が本作で描いたのは
映像を残すことができても
メディアというのは冷酷なものでしかない
という諦観だったのではないかと思われます。
そして本作のラストも
そんなメディアの冷たさを感じさせる
寂しいものなのです…
↑映画のラストシーンは、流血の民主党前ではなく
誰もいない緑の小道。
どんなラストなのかは、是非皆さんの目で…
という訳で次回は
だららん探偵
というテーマで
ロング・グッドバイ
という映画を解説してみたいと思いますので
どうぞよろしくお願いいたします。
ではまた(*゜▽゜ノノ゛☆
おまけ
①ハスケル・ウェクスラー氏の
撮影した作品に興味がある方へ…(その1)
②ハスケル・ウェクスラー氏の
撮影した作品に興味がある方へ…(その2)
③90年代以降の
ニュースを恣意的に捏造するようになった
メディアの映画に興味がある方へ…