この記事は RWPL Advent Calendar 2025 の4日目の記事である。
RWPL誕生秘話に始まり、安全なSQLi調査手法、Sliverのオプション解説と、技術的で濃厚な記事が続いた。ここらで少し趣向を変えて、今回は「ヒューマン・インターフェース」における脆弱性対応、いわゆる人間関係のデバッグについての話をしようと思う。
本来、私は話が通じない相手とは距離を置くことで心の安寧を保ってきた。理解不能な人間からは、物理的に切断する。転勤族として幼少期から国境や文化圏をまたぎ、数えきれない出会いと別れを繰り返す中で身につけた、最も効率的なフィルタリング処理だと。
しかし、人生とは残酷なもので、回避不可能なレガシーな対話の難しい人物と接続せざるを得ない局面がある。最近、私の前に現れたその人物も、他者への想像力が欠落した、実に幸福で自己中心的な人間だった。
今日の記事は、そんな彼との摩擦から生まれた、私なりのマニュアルである。
相手の言葉を「翻訳」する
相手が一方的に話を続ける時、私はそれを「暴力」ではなく「悲鳴」だと脳内変換することにしている。かつて趣味の集まりで出会った人たちがそうだったように、人は不安や疲労が溜まると、自己の輪郭を保つために言葉を吐き出し続ける。「俺の話を聞け」という態度の裏には、「私の存在を認めてくれ」というSOSが隠れていることが多い。だから彼が自慢話を始めたら、あえて相槌のギアを落とし、「それほどのことを一人で抱えてこられたんですね」と背景を労う。すると不思議なことに、騒音は、ふと止まる。
意図的に「弱み」をさらけ出す
こうした手合いに対し、正論や強さで対抗するのは下策である。私はこれまでの経験から、「弱み」こそが大事だと学んだ。 警戒心の強い相手や虚勢を張る相手には、こちらから腹を見せる。「実は私、この分野が全くダメでして」と隙を見せることは敗北宣言ではない。「ここは戦場ではない」と知らせるための、高度な政治的メッセージ。
共通プロトコルの敷設
対話を成立させるための地道なバックグラウンド処理も忘れてはならない。彼が私の興味のないジャンルの話を延々と続けるなら、私はYouTube等活用し、関連動画を検索して知識をインストールする。 これは迎合ではなく、海外生活で現地の言葉を覚えたのと同じ、単なる「環境適応」。好みではないデータを一時的にキャッシュすることは、共通言語を持たない相手と回線を繋ぐための、唯一のケーブル工事である。結局のところ、私がやっているのは徹底して「雑味を排除する」という作業に他ならない。相手がどれほど未熟でも、こちらまで思考停止してしまえば、そこには不毛な喧騒しか残らないからだ。
おそらく、この文章が彼に届くことはないだろう。彼は明日もまた、私の顔色など見ずに自分のパケットを投げ続けるはずだ。だが、それでも構わない。
数年で住む場所が変わる根無し草のような人生を送ってきた私にとって、人間関係とは一期一会。相手がどれほど拙くても、私だけはプロとして丁寧に音を合わせ続け、それがいつか去り行く者としての、せめてもの作法だと。
この前バイクのレースで優勝しまして、2Lの白ワインをいただきました。どうやらサーキットの位置する山梨ではブドウがゆうめいだとか。それを飲みながら書いていたら上記の通りキモくなってしまいました。乱文の言い訳をアルコールのせいにするのは私の甘えかもしれませんが、いただいたワインがかなりの甘口だったもので。どうかご容赦ください。