カクテル閑話放題 その2『氷』 | 空閨残夢録

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 カクテルをつくる技法は大別するに4種類ある。その①は、シェイカーで材料をシェイクして作る。その②は、ミキシング・グラスを用いてバースプーンでステアして作る。その③は、グラスに直接作るビルドという技法。その④は、ブレンダーもしくはミキサーなどの電動攪拌機で作るブレンドという方法で、これはフローズン・ダイキリなどのシャーベット状のカクテルを作る技法である。



 これらに共通することは、氷が最大の必需品であり、氷が材料として欠かせないものとなっていることだが、本日はこのなかでもかき氷のような納涼気分を味わえる④のブレンド(Blend)について特に話題とするが、その他にもパンチというカクテルがあり、このパンチの手法は4種の技法とは異なることを挙げておくが、このパンチについても述べよう。



 氷を使用するカクテルは19世紀後半に登場する。それはドイツ人のカール・フォン・リンデが製氷機を発明したのが1870年代。これを機にアメリカのニューオリンズにあるインペリアル・キャビネット・サロンで氷を活用した“ジン・フィズ”が誕生したと伝わる。



 フローズン・スタイルのカクテルが流行りだすのが、1950年代初期頃、1951年に発表されたJ・D・サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』で、主人公の17歳のホールデン少年が一番好きな飲み物として描かれている。



 電気ミキサーのことを米国ではエレクトリック・ブレンダー、または単にブレンダーと呼ぶが、そして、これを使って作るカクテルの技法を“ブレンド”と呼び表す。



 このフローズン・スタイルのカクテルは1930年代には生まれていたと伝わるが、アーネースト・ヘミングウェイの晩年の好物としても特に有名である。ヘミングウェイのよく飲んだのは“フローズン・ダイキリ”である。







 さて、ボクの個人的なフローズン・ダイキリのアレンジしたレシピを紹介しておこう。夏には少々ミント風味で「フローズン・ダイキリ」に清涼感を与えてる。そのレシピは以下に・・・・・・

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ホワイト・ラム=60ml

レモン・ジュース=45ml

シュガー・シロップ=20ml

コアントロー=10ml

ホワイト・ミント・リキュール=2dash

クラッシュド・アイス=500cc(1カップ)


以上の材料をバー・ブレンダーもしくはミキサーで攪拌する。ミントの葉を大きめのソーサー型シャンパングラスに飾って、ストローを添えて供する。

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 ミキサーが無ければ、氷をアイスピックの柄で、布に包んだキューブアイスをクラッシュして、かき氷風にいただくカクテルもある。それは「フラッペ」というスタイルで、お好みのリキュールをクラッシュした氷を入れたフラッペ・グラスに注いで味わうが、ボクはリキュールのシャルトリューズのヴェールを好んでフラッペでやる。グラスはオン・ザ・ロックのものにしてもらう。女性はミントのリキュールなどをフラッペ・グラスか、もしくは、ソーサー型のシャンパン・グラスにストロー付きで飲むのが絵になろう。


 さて、パンチというカクテルは、大勢の人が集うパーティーなどで主に作られる。パンチ・ボールに大量の酒や副材料にブロック・アイスを入れて、パンチ・カップに提供してサービスされる。



 ボクはスペインの家庭でよく飲まれる“サングリア”をパンチにしてよく提供していた。・・・・・・そのレシピも載せておこう。

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赤ワイン=1ボトル

ブランデー=30ml

コアントロー=30ml

クレーム・ド・カシス=30ml

オレンジ・ジ ュース=180ml

レモン・ジュース=30ml

シュガー・シロップ=60ml

シナモン少々とオレンジ・ピールやレモン・ピールなどを一晩ほど漬け込み出来上がり。(約15人分)

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 このサングリアを凍らせて、それをかき氷状にして、夏は楽しむこともできる。これは本場のスペインでは“グラニサード”というが、サングリアを冷凍庫で凍結すると、これを“ソルベツ・デ・サングリア”となるわけだ。さらに、それを“かき氷”にすると“グラニサード・デ・サングリア”となる。



 もちろん、サングリアに限らずに赤ワインでもカヴァでも、またジュースやアイスコーヒーでもグラニサードとして楽しむことはできるわけである。