カプレーゼとアランチーニ | 空閨残夢録

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デカダンよりデラシネの戯言

 この料理は、インサラータ・カプレーゼではない。見た目はカプレーゼ風の、実は塩豆腐サラダなのである。これが今宵の前菜で晩酌にしている。カプレーゼはイタリア南部カンパニア地方のサラダで、直訳すれば「カリブ島のサラダ」というような意味である。モッツァレラ・チーズにトマト、オレガノやバジリコを使ったサラダである。

 この料理は夏によく自分で作るのだが、今回は塩豆腐を代用にして作ってみた。塩豆腐は絹ごしの豆腐を塩漬けにして水抜きして、固くなったお豆腐をモッツァレラ・チーズの代用にする。豆腐は好物なので、チーズよりも価格もリーズナブルにできるから気にいってしまった。今回はバジルの市販のソースで味付けして食べてみた。









 シチリアとナポリの名物に“アランチーニ”がある。これは所謂ライスのコロッケであり、その形をオレンジにみたてて“arancini - 「小さなオレンジ」”と呼ばれる。

 ナポリでは“アランチーニ・ディ・リゾ(arancini - 「お米入りの小さなオレンジ」)”とか、“パッレ・ディ・リゾ(palle di riso - 「お米のお団子」”とも呼ばれている。

 ローマではライスのコロッケを“スプリ(suppli)”とも呼ばれているが、このアランチーニというライスのコロッケの名称を知ったのがわりと最近のことである。実は25年くらい前にボクはこの料理をよく作っていた。

 その頃、銀座のバーで働いていたのだが、ご近所のレストランにあるお品書きである“カマンベールチーズとライスのコロッケ”のレシピと作り方をシェフに教わり、自分の働いていたバーでこの料理を供していた。

 当時は、それがアランチーニというシチリアやナポリの料理とも知らずに調理していた。そのレシピが記されたノートが偶然にも出てきたので下記に載せておこう。









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(材料)

○無塩バター 450グラム

○米       1合

○小麦粉    1合

○牛乳     1.1リットル

○カマンベール 5缶



①鍋に、バター、米、小麦粉を入れて炒める。


②別の鍋に牛乳を沸かす。


③牛乳が沸騰したら①の鍋に入れて一混ぜしてから、150度のオーブンに30分加熱す  

 る。


④カマンベール・チーズを細かく切って胡椒をまぶす。これをオーブンから出した鍋に加  

 えて柔らかく溶けるまでよく混ぜる。


⑤チーズが溶けたら型に流し込み、冷めてからピンポン玉くらいの大きさの円形に丸め  

 てパン粉をまぶしてフライにする。



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 以上のレシピからすると本場の調理法とは異なるが、コロッケの形状はナポリ風であろう。シチリアではカチョカヴァッロやパルミジャーノ・レッジャーノのチーズが使用される。ナポリではパルミジャーノやペコリーノチーズが使われるようだ。ローマではモッツァレッラにカチョカヴァッロ入りのようだ。

 いずれも本場では湯炊きしたお米に卵とチーズを入れて作るようだが、ボクのレシピでは牛乳でお米を炊くのが面白い方法だと思われる。チーズもカマンベール・チーズにして日本人好みのレシピにされているのも特徴であろう。