とうとうここまで来た

 

あとはボタンを押すだけだ

 

彼がボタンを押すと

この世の全てが終わる。

 

 

 

彼はいつからか

生きることに絶望した。

 

でも死ぬことはできなかった。

 

だから死んだように生きた。

 

そのように生きていたある日、

ある宗教的な場面を見た。

 

 

彼らはひざまずいて神に祈っていた。

彼らはとても幸福に見えた。

 

彼は思った。

 

俺も俺の神をつくり

崇めよう

 

 

 

そして彼は彼の宗教をつくり

たった一人で

それを信仰し続けた。

 

やがて時は流れ...。

 

 

そして、

そして、

とうとうそこまで昇りつめた。

 

あとはボタンを押すだけ。

 

これで世界は消え去る。

無になる。

彼も消える。

 

そして、

押した。

 

 

 

ことばが光のように射してくる

 

今までなかった新しいことばの

 

予感がしている

 

 

今までとは違った風景

 

今までとは違った自分

 

新しい未来の予感

 

 

 

 

光をとらえるのは難しい

 

光はすぐに逃げてしまう

 

光はすぐに消えてしまう

 

 

 

 

 

それをつかまえたとき

 

新しい世界の扉が開くだろう

 

 

 

 

21.1.2

 

まもなく夜が明ける

 

風が吹いている

 

奴らがもうすこしでここにくるだろう

 

俺たちを皆殺しにするために

 

ここにくるだろう

 

 

不安がないといえば噓になる

怖くないといえば嘘になる

 

本当は不安や恐怖で押しつぶされそうだ

 

 

だが、負けるわけにはいかない

 

戦う意志はある

 

戦う準備は整っている

 

わずかだが仲間もいる

 

静かに息を整え

 

奴らがくるのを待っている

 

 

 

2017.8.15