1966年、アメリカとイタリアの合作映画。

原題は、「The Bible」

BSシネマで録画しておいたものを観る。

凄まじく退屈。

居眠りせずに観ることは不可能。

印象的な映像はある。

（方舟、バベルの塔、ソドムの町など）

監督は1975「王となろうとした男」のジョン・ヒューストン。

音楽は、なぜか黛敏郎。

以下、荒筋。

天地創造とアダムの誕生。

アダムとイブの楽園追放。

カイン（兄・農耕者）とアベル（弟・羊飼い）が生まれる。

カインは「所有」という意味。アベルは「命」という意味。

神は、カインの捧げ物（作物）を喜ばす、アベルの捧げ物（肉）を喜んだ。

カインが、アベルを殺す。

カインの作物は実らなくなると神に告げられ、

カインは放浪者になる。

→エデンの東・ノドに移住。

※映画「エデンの東」1955では、
キャル（カイン）＝ジェームス・ディーンが弟、
アローン（アデル）が兄と、なっていた。
これは日本語字幕の誤訳らしい。
原作の英語では、brotherとしか呼び合っておらず双子の設定だそう。

カインの子孫は、知識と手の技術に優れていた。

ヤバルは天幕に住み、家畜を飼う者の祖に。

ヤバルの弟ユバルは、竪琴を弾き、音楽を奏でる者の祖に。

トバル・カインは、鉄や銅の刃物を鍛える者の祖に。

カインの子孫は栄えて、悪事を働くようになる。

神は、人類を滅ぼすことを決意。

セト（アベルの死後に授けられたイブの三男）の子孫ノアに方舟を作るようを指示。

大洪水のあと、ノアの子孫だけが生き延びる。

V.コソフ筆

※船の中でノアの子が、ノアに質問する。
「（肉食の）動物に何を食べさせたらいい？」
　
……皮肉の効いたジョークかと思った。

ノアの子：セム、ハム、ヤフェト。

ハムの子孫、王であるニムロドはバベルの塔を築くが、

天に矢を放つ行為に神の怒りを買う。

神は、それまで一つだった言語をばらばらにさせる。

人々は混乱し、世界各地に散っていく。

ヘンドリック・ヴァン・クレーブ筆

※この「バベル」は、古代バビロニア王国の都市バビロンのことらしい。
　ジェーン・バーキンの「バビロンの妖精」は、
　ハリウッドの虚栄をバビロンになぞらえた歌。

※漫画「バビル２世」では、地球に不時着した宇宙人バビルが、時の権力者を動かして作らせたのがバベルの塔だそう。

16C.ピーター・ブリューゲル筆

１０世代後の子孫・アブラムは、神の命で弟の子・ロトら民衆を率いて移動。

カナンの地にたどりつき、そこから見渡せるすべての土地を与えられる。

19C.ヨージェフ・モルナール筆

アブラムとロトは天幕を張って各地を歩き周り栄えるが、

アブラムの牧者たちとロトの牧者たちが争うの見て、

別の土地に分かれて移り住むことを決める。

ロトは、肥沃なヨルダン川低域の町、ソドムとゴモラに向かう。

アブラムは、その反対の山方向に。

神は、アブラムに子・イサクを授け、子孫を星の数ほど増やすことを約束する。

そして、イサクには、アブラム同様、よそものとして他国に移り住み、その土地の支配者に苦しめられる試練を与えると告げる。

アブラムの妻サライは子ができず、侍女ハガル（エジブト人）をアブラムの妾にし、

子（イシュマル）を産ませる。

ハガルは、サライを軽んじるようになる。

ヨルダン川の南から４人の王が侵攻し、

ソドム、ゴモラなどにいるの５人の王と戦いになる。

ソドムは略奪され、ソドムに住んでいたロトらは捕虜として連行される。

アブラムは隊を率いて夜討ちをしかけ、甥のロトら捕虜を救い出す。

神は、アブラムに王たちの祖として「アブラハム」と名乗らせ、

サライを「サラ」と呼び、子を授け、諸国民の母とすることを約束する。

また、全ての男児に割礼を施すことを条件に、子々孫々の神となることを約束する。

年月が経ち、アブラハムとサラは年老いたが、子が授からない。

３人の神の使者がやってきて、

「邪悪なソドムとゴモラの町を滅ぼしに行く、

　帰る頃、サラに子が生まれる」

と告げる。

19C.ギュスターヴ・ドレ筆

19Cギュスターブ・モロー筆「ソドムの天使」

ソドムに住むロトは、神の使いを家に招くが、

群衆は、彼らを犯すために差し出すよう迫る。

ロトは、代わりに娘二人を差し出すと伝える。

神の使いは、群衆を盲目にさせたうえ、

アブラハムの甥・ロトとその家族に町を去らせ、

ソドムとゴモラを滅ぼす。

ニュルンベルククロニクルより（15世紀）

町を去る途中、

ロトの妻は禁をやぶり振り返ってしまい、塩の柱にされる。

※アブラハムは甥ロトのことを心配し、神の使者から
「正しい者が１０人いれば、ソドムとゴモラを滅ぼさない」
という返事を得るが、
結局正しい者は、ロトの家族４人（妻を除けば３人）だけだったということだろうか。

サラに子が授かり、神のいいつけどおりイサクと名付ける。

サラは、妾のハガル（エジプト人）とその子イシュマルを追放するようアブラハムに願う。

アブラハムは拒むが、神はサラの言うとおりにせよと伝え、二人は追放される。

ハガルとイシュマエルの追放　アドリアン・フォン・デル・ヴェルフ筆

※イサクは、英語で「アイザック」。「笑う」という意味で、その由来は、神の使いのお告げをサラが笑ったかららしい。

※「ユダヤ教の根底には、ユダヤ人以外は『神の子』ではない（中略）、ユダヤ人のみが、神であるエホバによって救われるのであって、その他の神はどうでもいい（中略）という思想がある。とてつもなく排他的な宗教なのである。」（中丸明著『絵画で読む聖書』P.74）

ノ砂漠をさまよった二人は、神の使いにより湧き水を与えられ、神はイシュマルとともにいると告げる。

神は、息子イサクを生贄にささげるよう、アブラハムに告げる。

（イサクの燔祭）

アブラハムは苦しみ叫ぶが、神の指示通りイサクを連れて山に登る。

捧げ物の羊がいないことに気づいたイサクは、父のすることに気づくがされるままに従う。

アブラハムがイサクを手にかけようとしたとき、

神が声をかけ、信仰を試したことを伝え、イサクは助かる。

そして約束通り、子孫を、天の星や海辺の砂のように増やそうと語りかける

※イサクの子はヤコブ。ユダヤ人の祖。（「やこぶのはしごてんまでとどく」）

その子に、兄弟たちのねたみからエジプトに売られ、のちに宰相となりイスラエルを大飢饉から救ったヨセフがいる。

※ヨセフの子孫はエジプトで増え、あのモーゼが生まれる。

※「イシュマエルは、荒野に住んで、弓を射る人となった。イスラム教の聖典コーランによれば、これがアラブ人の祖先であり、同じセム族である。ムハンマド（マホメット）はイシュマエルの末裔とされている。彼が自分の宗祖としてアブラハムを置くのは、このためだ。」（『絵画で読む聖書』）

※「つまり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の世界三大宗教は、みんなアブラハムに、砂漠にはじまっているのである。」（〃）

※「ユダヤ教徒だけがケタ外れに少ないのは、ユダヤ教がユダヤ人だけの民族宗教だという、排他性による。」（〃）

アブラハム役に、1961「ハスラー」1964「博士の異常な愛情」1964「黄色いロールスロイス」の、ジョージ・C・スコット(1927-1999)。

バベルの王・ニムロドに、1959「ベンハー」1964「ローマ帝国滅亡」のスティーヴン・ボイド(1931-1977)

神の使者に、ピーター・オトゥール(1932-2013)

カイン役に、2001「ハリー・ポッダー」のリチャード・ハリス(1930-2002)。

アベル役に、1966「続・荒野の用心棒」ジャンゴのフランコ・ネロ(1941-)

この二人は、セリフが数語しかなく、端役に近い。

主役は、アダム役のマイケル・パークス(1940-2017）と書かれることが多いが、

出演時間や役回り、存在感からして、ジョージ・C・スコットだろう。

ノア役のジョーン・ヒューストン(1906-1987、監督本人)もいい味を出している。