今日、外来にいつも来られる70代の女性患者さんが受診されました。
診察室に入ってこられた瞬間、どこか元気がない様子だったので、「どうしたの、今日は元気がないね」と声をかけました。すると、2週間前にご主人が胸部大動脈瘤破裂で突然亡くなられたというのです。
「まだ気持ちの整理がつかなくて……」と、声を震わせながら話されました。
ご主人には、私も一度だけお会いしたことがあります。つい1か月ほど前、インフルエンザワクチンを受けに来られたときに診察しました。もともと健康で、インフルエンザにもかかったことがなく、ワクチンもあまり好きではなかったそうです。それを奥さんが説得して連れてこられたのだそうです。
スポーツが大好きで、地元のシニアのサッカーチームに所属されていました。亡くなられた日も、サッカーの練習中だったとのことです。
奥さんによれば、ご主人は「俺はサッカーのグラウンドで死ねたら本望だ」とよく口にしていたそうで、まさにその通りの最期を迎えられたのでした。
この話を聴きながら、私自身のことも考えさせられました。
私も自分のどこかに大動脈瘤があって、いつか突然破裂して死ぬかもしれない……そんな漠然とした不安はこれまでも心の奥にありました。しかし今回のお話を伺い、怖がるだけでなく、適切な検査を受けて正面から向き合うことの大切さを改めて感じました。
亡くなられたご主人のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
