今日の外来で、ある患者さんから「先生、百草丸を処方してもらえませんか?」という相談がありました。

 

 百草丸……?

 

 実は、私はすぐにピンと来ませんでした。そこで調べてみると、百草丸はドラッグストアでも販売されている胃腸薬で、長野県に伝わる伝承民間薬なのだそうです。主成分は**キハダ(黄柏/オウバク)**という樹木。ミカン科の落葉高木で、古くから健胃作用や抗菌作用を期待して使われてきた生薬です。

 

 さらに調べると、百草丸には

  • 御岳百草丸(第2類医薬品)
  • 日野百草丸(第3類医薬品)

の2種類があり、いずれも 一般用医薬品(OTC) に分類されているとのこと。

 

 

 つまり、医療機関で処方する「医療用医薬品」ではないため、病院で百草丸を処方することはできません。

 

 患者さんには「これは市販薬なので、薬局で購入してくださいね」とお伝えするほかありませんでした。

 

 医療現場では時々、こうした“市販薬の処方希望”に出会います。市販薬と処方薬は制度上まったく別物で、たとえ同じ成分であっても、分類が異なれば処方としては扱えません。

 

百草丸のように、昔から愛用されている薬には歴史や背景があり、調べてみるととても興味深いものがありますね。