今日、外来にいらした80代の女性の患者さんが、「BMIが25を超えてしまったので、ダイエットしようと思います」とおっしゃいました。

 

 私は思わずこう申し上げました。

 

 「そのくらいのBMIのほうが、むしろ長生きできますよ。無理に体重を減らさず、好きなものをおいしく食べましょうよ」と。

 

 少し驚いた表情をされていましたが、これは気休めではありません。実際、国内外の多くの研究で、「高齢者ではBMIがやや高めのほうが、死亡リスクが低い」ことが示されています。

 

 たとえば、**ノルウェーのKvammeら(J Epidemiol Community Health, 2012)**による研究では、70歳以上の男女を対象にした追跡調査で、BMI25未満の群では死亡リスクが上昇し、2530程度の群が最も長生きであったと報告されています。また、2024年の国際的メタ解析(Nowak MM et al., PMC11051237)でも、成人全体で死亡リスクが最も低いBMI2530 kg/m²とされています。

 

 つまり、80代の女性がBMI25程度あっても、決して「太りすぎ」ではなく、むしろ“理想的な体格”の範囲にあるといえます。

 

 高齢期では、筋肉や骨の量が減りやすく、少しの体重減少が体力低下や転倒リスクの増加につながります。「やせている=健康」ではなく、「ほどよくふっくら」が、実は長寿の秘訣かもしれません。

 

 どうか皆さん、無理なダイエットにとらわれず、美味しいものを楽しみながら、心も体も健やかに過ごしましょう。