第一話「バリスタと話す猫」前編
魔法蒸気エスプレッソマシンから立ち上がる湯気が、店内に漂うコーヒーの香りとエッセンスに合っている。ルナ・アラビカは早朝の準備に没頭していた。
「この豆、魔力の残りが強いわ…」
豆を挽く音が、まだ誰もいない店内に心地よい音を響かせてる。 王都ルミナの商業区は、この時間はまだ静かだった。 窓の外では小雨が降り始め、魔法の街灯が淡くゆらめいている。
『コーヒーカフェ・アストラ』
看板の魔法文字が雨に濡れて、より一層幻想的に考えていた。 この店は王立魔法学院から徒歩15分ほどの場所にあり、魔法商店街と一般商店街の境界に位置している。 魔法使いも一般市民も、誰でも気軽に居られる場所として知られていた。
3階建ての魔石造りの建物は、一見すると古めかしいが、内部には最新の魔法設備が整っている。1階のカフェスペースには30の席があり、窓際には浮遊する観葉植物が優雅に配置されていた。
開店まであと30分。ルナはノートを確認しながら、今日のスペシャルティコーヒーの準備を進める。エンチャントコーヒーの魔法陣を確認し、精霊の力を借りた焙煎機の温度を調整した。
突然、入口の魔法の門が開いた。ルナは見て振り向いた。開店前のはずなのに…。
「いらっしゃいませ…あれ?」
入ってきたのは一匹の黒猫だった。艶やかな毛並みの、どこか気品漂う猫。琥珀色の瞳は、まるで古代魔法の書を読んで賢く考えていた。
「迷子かしら?」
黒猫はカウンター席の前で気づかないと、浮遊するバースツールの一つにすっと飛び乗った。
「あら、寒いでしょう?温かいミルクでもどう?」
「ミルクより、エスプレッソをいただきたいにゃ」
「……え?」
「失礼、つい出てしまいました。南方の密林にあるドラゴンマウンテン産の深煎りで、、もし可能でしたら」
驚きのあまり温かいミルクのカップを落とし、目を見開いた
ルナは驚き、目を見開いた。今、確かに猫が、かなり高級品として知られる希少な豆を指定注文した。
「夢?、きっとまだベッドの中で…」
「夢ではありませんにゃ…」黒猫は少し照れくさそうに耳を掻いていた。
「改めまして、私の名前はモカ。…あっ。その、モカです。そして、あなたに会いに来たのです。」
外では雨がしっかりと降り始め、空中庭園のある3階の窓から漏れる不思議な光が、雨粒を虹色に染めていた。
この魔法の街で、さらに不思議な物語が始まろうとしていた―。
