゚ケイは眠りにつくのに時間がかかります。
9時にベッドに入っても、10時半前に寝入ってくれれば
「助かった~」って思うほど^^
必然、ベッドの中では子守唄を歌ったり、お話をしたり・・・。
童謡も歌い、桃太郎もお話し、それでも尚、
「なにかお話してよ~~~。」
「もうママの知ってるお話ないよ~~~。」
「な・に・か・お話してよ~~~!!!」
「うーーーーんと、うーーーーーんと、、、じゃあねぇ・・・・。」
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むかーしむかーしあるところに、ケイくんという名の男の子がいました。
ケイくんは、とても元気で明るい男の子でした。
ケイくんはとっても動くのが好きで、でんぐり返しが得意でした。
鉄棒でも、ブタの丸焼きが上手でした。
いつもお友達と、泥んこになって遊んでいました。
だけどケイくんは生まれた時は、とってもとっても小さかったのです。
あまりにも小さく生まれたので、生まれてしばらくケイくんは、
病院の 『 保育器 』 という名前のベッドの中に入っていました。
まだ自分で呼吸ができなかったので、
『 人工呼吸器 』 という管が、お口から体の中に入っていました。
そのためにケイくんは、泣いても声が出ませんでした。
ケイくんが一生懸命泣いているのに、
パパやママは保育器の外で、
あれ?顔がくしゃっとなってるー。笑ったのかなー?なんて言って
わかってくれない時がありました。
保育器の外に出てしまうと、
まだケイくんの皮膚は薄すぎて体が冷たくなってしまうので、
保育器の窓をぴったりと閉めて、
ケイくんは一人でその中にいなければなりませんでした。
誰もケイくんを抱っこしてくれません。
その中でケイくんは、いっぱいいっぱい頑張りました。
注射もいっぱいしました。
点滴も毎日しました。
呼吸器を外す練習をする時は、
時々息の仕方がわからなくなり、
お顔が真っ青になることもありました。
パパとママはそのたびに思いました。
その注射は、パパに代わりに打ってほしい。
その点滴は、ママに代わりにしてほしい。
だけどそれは無理なのでした。
ケイくんの注射をパパに打っても、ケイくんは元気になりません。
ケイくんの点滴をママが代わっても、ケイくんは大きくなりません。
だからやっぱり、
ケイんの注射はケイくんが、
ケイくんの点滴はケイくんが受けるしか、
それしか方法がなかったのです。
ケイくんは痛いよーも、苦しいよーも、寂しいよーも、
全部一人で引き受けました。
ケイくんは、本当によくがんばりました。
もう一生分、がんばりました。
だけどケイくんはいっときも、一人でいたことはありませんでした。
パパもママも毎日ケイくんに会いに来ました。
先生や看護師さんも、いつもいつもケイくんを見ていてくれました。
おじいいちゃんも来てくれました。
おばあちゃんも来てくれました。
従兄弟のお兄ちゃんは、
慣れない針と糸を使って、ケイくんにお守りを作ってくれました。
ママのお友達も、
パパのお友達も、
おじいちゃんやおばあちゃんのお友達も、
ケイくんが元気になるようにたくさんたくさんお祈りをしてくれました。
ケイくんの保育器の周りは、お守りだらけになりました。
そのおかげもあったのでしょう。
ケイくんはゆっくりゆっくり大きくなっていきました。
ケイくんの体重が100グラム増えるたびに、みんなで大喜びをしました。
1000グラムを超えたら、保育器から出てママに抱っこしてもらえるよー!!と、
先生は毎日ケイくんに声をかけてくれました。
そして生まれてから56日後に、初めてママはケイくんを抱っこすることができました。
その時の嬉しさを、ママは一生わすれません。
そして生まれてから57日後に、初めてパパはケイくんを抱っこすることができました。
その時の嬉しさを、パパも一生わすれません。
そのようにしてケイくんは、病院に4か月間いました。
ケイくんはがんばり抜きました。
人より小さく生まれたおかげで、人よりたくさんの応援団に囲まれました。
そしてケイくんは今、
元気なでんぐり返しと、
元気な豚の丸焼きと、
元気な泥んこ遊びを通して、
みんなにすっかり恩返しをしてしまいました。
・・・おしまい。
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「ママー」
「うん?」
「ボク、ぜったいガンバルから!!」
「あははー。ケイはもう一生分頑張ってくれたから、もう充分だよー。」
「ボク、ぜったいガンバルからね!」
「・・・うん。」
ケイにはまだわからない単語や言い回しだらけだったと思うけど、
それでも何かを感じ取った様子のケイ。
ママが伝えたかったのはね、みんながこんなにしてくれたんだよってことではないんだよ。
みんなケイに生きててほしかった、
大きくなってほしかった、
元気いっぱいに成長してほしかった、
みんなケイが大好きなんだよ。
そしてケイは、みんなの願いを全部叶えてくれたんだよ。
それをこの先の人生で、何があっても、知っていてね。
おやすみ、ケイ。
また明日。