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・幸福の戦士、全員集結!

 

「このまま飛び出していけば、俺まで幸福を奪われちまう。」

 

そう感じた伊吹は、ひとまずその場を立ち去った。

 

巨大な不幸の残骸が莉子の方に向かって近づいてくる。

 

「あんた、莉子まで襲おうとするんじゃないわよ。」

 

莉子が後ずさりする。

 

その時、何者かの強烈な攻撃が不幸の残骸に当たり、不幸の残骸が倒れる。

 

「デストロイア様!」、と莉子。

 

デストロイアは黙って不幸の残骸の不幸だけを手から吸収する。

 

「かなり集まったな。引き続き不幸集めを頼むぞ。」とデストロイア。

 

「ははぁ。」、そう言って莉子がひれ伏す。

 

デストロイアは音もなく静かに消え去った。

 

何時間経っただろうか。

 

月島伊吹は再び上条たくとの心の中に入り込んだ。

 

そこには、幸福を奪われた戦士たちの姿だけが無残にも残っていた。

 

あの強大な不幸の残骸はいない。

 

「南瀬ほのかと田中恵理、テメェらまた一緒に話さなくても良いのか。一ノ瀬海翔、テメェは将棋が出来なくなっても良いのか。将来の夢をかなえるんじゃないのか。望月湊音...」

 

伊吹は一人一人に声を掛けていく。

 

まだわずかに残っている希望、生きる気力、それが彼らを復活させることに繋がるのではないかと思ったのだ...

 

 

「ここはどこだろう...」

 

とても寒い。猛吹雪が吹いている。その中を2人で手を繋いで突き進む。

 

恵理が今にも倒れそうなほのかの手を引いて歩く。

 

「私、もうダメかも。」

 

「諦めないで。」

 

お互いを見つめ合う。そう、私たちはどんなにつらい時でもずっと一緒だ。

 

その瞬間、2人は何か大事なことを忘れているような、不思議な感覚に襲われた。

 

望月湊音は水に溺れていく夢を見ていた。重力の重みが身体にのしかかる。

 

抵抗することも出来ずに、静かに底に沈んでゆく。

 

「随分と儚かったな、俺の人生。」

 

そう思った時、イデアの声が蘇った。

 

「自分の幸せより、他人の幸せを優先する。君には、幸福の戦士、デューグリュックになるための素質がある。辛いことや哀しいこと、苦しいことがあっても明日に向かって一歩一歩進んでいけば必ず道は開ける。」

 

上を見上げるとイデアが手を伸ばしている。思わず手を掴む。

 

一ノ瀬海翔は盤面を見つめていた。これは何だ。

 

とても楽しく、奥が深いゲーム。

 

小さいころから大好きだった遊び。

 

それがあれば友達や恋人がなくても寂しくない、かけがえのない存在。

 

そうだ、これは将棋だ。

 

生意気なことを言っては、しょっちゅう師匠に怒られてたっけ。

 

けど、それでも師匠はいつも僕のことを想って行動してくれていた。

 

そうだ、名人、将来なりたいもの、、

 

そう思った時、彼は忘れていたことを思い出した。

 

白石梨乃は自分がデストロイアと闘って負ける姿を見ていた。

 

デストロイアが不気味に微笑む。

 

泣きながら腕時計を見つめる自分。

 

理想郷の人たちや家族のことが目に浮かぶ。

 

「テメェは悔しくないのか、未来の世界をデストロイアから取り返さなくて良いのか?」

 

誰かの声が聞こえる。

 

「うるさいわね。言われなくてもそのつもりよ!」

 

つい大声で叫んで、はっとした。

 

そうか、あたし、不幸の残骸にやられて、、

 

せっかくフォーアッシュフラワーで想像力の薬を何とか作ってここまで来たのに、こんなところで立ち止まっているわけにはいかない...

 

5人の身体が光に包まれる。

 

身体をまとっている光が消え去ると、身体が自由になった。

 

幸福の戦士、デューグリュックの復活だ。

 

月島伊吹は物陰でガッツポーズをする。

 

「ほのか」

 

「やっと会えたね、恵理」

 

2人が抱き合う。

 

少し遅れて、あのイデアもここに姿を現した。

 

「イデア!」

 

「立派になったね、湊音。」

 

2人が手を取り合う。

 

「ようやく姿を現したね、姉さん、君がずっと僕たちのことを見てたのは知ってたよ。」

 

「いけ好かないガキね、いつから幸福の戦士の仲間入りした気になってるのよ。大体あんた何様のつもり?」

 

梨乃と海翔が向かい合ってお互いを睨みつける。

 

幸福の戦士たちの様子を鏡で見ていた平林莉子は少し微笑んで呟いた。

 

「凄い回復力ね、これが幸福の戦士の力... これからますます楽しくなりそうだわ。」

 

 

 

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