この話は書いたかもしれない | 物質の下僕

物質の下僕

語りえぬものには、沈黙しなければならない












let me have my enemies butchered

重複してもいいや。

あまりいい話じゃないが。


昔々、ある家でイヌが飼われていた。

両親と娘二人の家族。

イヌは14歳だか15歳。老犬だった。

一日中寝ているだけが仕事。

ある日、母親と娘たちが買い物から戻ると家には父親が一人。

イヌはいなかった。

「保健所に持って行ってもらった」

「!!」

以来、家族は父親と口をきかなくなった。


次は私の親戚の話。

母の伯父夫婦とその子供たち(母の従妹)は、ある地方都市にかたまって住んでいた。

その従妹の一人の配偶者、がさつで粗暴で品がない、と散々に言われていたのを子供の私も耳にした。

祖母と母、叔母の三人と他に誰かいたかな、その時に。

だが衝撃的でいまだに忘れないのは、その粗暴さの限度なさである。

その家で飼われていたイヌがあまり人になつかず、気性が荒く、よく吠えたと言う。

ある時、そのイヌがMr.粗暴に噛みついたと。

Mr.粗暴は棒でイヌを殴り殺した。

えっ?

後年、私も成人してからそのMr.粗暴に一度だけ会ったことがある。どこにでもいる田舎のオッサンだ。



数十年前の日本なんてこんなもんだったのだ。

これらの人々はイヌを家の中で飼うなんて夢にも思わないだろうな。

今でもこれと大差ない人々がフツウの顔して、隣人としてどこにでもいるのだ、と言うことを忘れずにいなければならない。

だから私はイヌを連れて散歩している時も油断を怠らないのだ。

人間に対しては私の方が野蛮であることをいつでも示せるように。