休職最終日、久しぶりに会社に行った。4ヶ月前は通い慣れていたはずなのに、すごくドキドキした。


復職の手続きや、復職後の上司、先輩と少し話をして、14時くらいには会社を出た。来週からは毎日また来るのだと思うと、少し不安。
そこから電車に乗って東京駅で降り、丸の内側にある丸善に入った。

大きい本屋は、良くも悪くもわかりにくい。良いというのは、色々な本があって、目的の本以外にも面白そうな本が目に入って、楽しい。悪いというは、目的の本がすぐに見つからないということ。

小説などがある3階に到着し、さまよう。痺れを切らして検索機で調べてみる。

「ざ…く…ろ…」

候補に「ざくろちゃん、はじめまして」がヒットする。作者名に「藤崎彩織」とあると、「むふふ」と思う。邦楽コーナーにあるとのこと。

散々迷って邦楽コーナーに到着すると、「ざくろちゃん、はじめまして」が平積みされている。嬉しい。隣の隣には、好きなバンド、サカナクションの山口一郎の本も平積みされていて、さらに嬉しい気持ち。両方を持って、レジに向かった。

ジムのレッスンまで2時間近くあったので、空いてるスタバを見つけて、アイスコーヒーを頼む。使い捨てのカップではなく、グラス(のようなカップ)が新鮮だ。

「ざくろちゃん、はじめまして」の本を改めて、まじまじと触ってみた。表紙の写真の部分は少しツルツルしていて、他の白い部分はザラザラしている。折り返しは、ブルーベリーのような木の実柄。名久井直子さんの装丁、好きなんだよね。

出産宣言、妊娠発覚〜出産まで、一気に読んだ。時間を忘れるとは、このこと。「妊娠発覚編」の、ふっと「妊娠していたら、薬を飲むのはやばいかな」、みたいな、なぜか不思議と浮かんでくる「女の謎の感覚」はわかるような気がした。「生理がそろそろ来るかも!」と思った次の日に来る、あの感じ。違ったらすみません。

胎児の大きさが、妊娠の期間が重なるにつれ「ざくろの種」、「ブルーベリー」、「いちご」、、、そして「小さめのスイカ」と果物で表されているのがかわいかった。妊娠経験のない人間からすると、その大きさや腹にその大きさ重さがいる、という想像だけはできるもの。

でも、妊娠時期の体や心の辛さは、きっと100分の1もわかっていないと思う。同じ女性であっても。

でも、私にもはっきりと共感してしまうところがあった。

私は誰かに「大丈夫ですか?」と聞いてもらいたくて仕方なくなっていた。(p.41)

体調が悪いと自分でもわかっているのに、「休みたい」と言えない。4ヶ月前、休職直前の自分とかなり重なった。誰かに、「大丈夫?休んだ方がいいんじゃない?」と言って欲しかった、あの時の自分と。

本当は、限界が来る手前で自分の体調の変化に気づいて、自分から「休ませろ!」と言えたらどんなに良かったか。「こんなに仕事が忙しくて、あなたのせいでこっちまで忙しいのに、どうしてそんなことが言えるの」と、頭の隅で囁く誰か。内部的なプレッシャーにどんどん追い込まれて、体も心もボロボロになった。(ドMではない。)

藤崎彩織は自分にすごく厳しそうなので、きっと何回もこんな悪魔とのやり取りを繰り返したのだろうな、と想像に難くない。

その後の、オザケン、つまりレジェンド小沢健二の言葉も彩織ちゃんと同様めちゃくちゃよくわかる。

「体のいうことを聞きなさい」(p.66)

心の浮き沈み、メンタル不調をどうにかしようとするとなかなか大変だけど、体を整えよう!という試みは調べたり聞いたりすればたくさんあって、案外取り組みやすいもの。休職中にとても感じた。

この後の、

流石は小沢健二。言ってほしいことを言ってほしいタイミングで言ってくれる。(p.66)

という彩織ちゃんのコメントも好き。日記を少し見せてくれたみたいな気持ちになった。最近銀色夏生の「つれづれノート」シリーズを読んでいるので、人の日記(くらい直球なもの)は読んでいて嬉しい気持ちになる。

タイで彩織ちゃんが熱を出して、彩織ちゃんが「休みたい」と言う前にメンバーが「3人で頑張る!」と言ってくれた、のエピソード(p.74)は、彩織ちゃんのインスタにも上がっているけれど、改めて読んで泣いた。ずっと読んできて、彩織ちゃんがとても悩んで、苦しんでいるのが伝わってきていたから。セカオワのオタクだからと言うのもあるけど。


人が生まれるって、本当に大変。これから100年くらい生きるかもしれない生命がこの世に爆誕するということだもの。

赤ちゃんが生まれてから、しゃべるのを「オニャ」や「ほにゃ」といった言葉で表現しているところに、彩織ちゃんの「愛しい気持ち」をすごく感じた。

出産前も、出産後も、これまで自分が持っていた感覚や価値観が覆されるような、激動な日々と、本当は晒すのを一瞬迷ってしまうような感情や経験を教えてくれて、本にしてくれて、ありがとう。

晴れ晴れとした気持ちで本を閉じ、夕暮れのジムへと向かった。