「医療通訳者の業務と報酬の関係に対する意識調査
―AiMIS登録通訳者へのインタビューから―」
12月8日、東京大学で開催された国際臨床医学会で
一般演題として口演発表しました。
2017年度一年間の国際医療福祉大学大学院 修士課程
医療通訳・国際医療マネジメント分野での勉強・研究、
2018年度の各種医療通訳勉強会・研修会参加の集大成です(笑)
ここで要点のみシェアしたいと思います。
ただし、これはAiMISでの結果であり
他の医療通訳団体はこの限りではありません
せっかく養成しても稼働していない通訳者が増えている。
それは単に報酬が少ないから?
医療通訳者の業務と報酬の関係性についてインタビューしました。
- 対象はフォローアップ研修参加者のうち協力承諾が得られた18名。
- AiMISへの通訳依頼件数は増えているのに、被調査者の半数が非稼働
- 有償ボランティアでの活動について6割が否定的
- 一人ずつインタビューをしたにもかかわらず、二人が、このシステムは「欲張り」だという全く同じキーワードを挙げ、「『医療通訳のプロとして』高度な専門性を求められるのに、立場は『ボランティア』というのに納得がいかない」
- 現在の報酬(1,500円/1h、交通費なし)については、妥当ではないという考えが6割
- 交通費支給希望が7割。「交通費が2,800円かかった」という具体例
- 時給は、2時間5000円以上希望が5名
- 希望する報酬体系はビジネスベース
以上の結果からわかること:
- プロのレベルと責任感を伴った通訳を求められながら,報酬・立場は「ボランティア」ベースという矛盾した体制に納得がいかないまま、モチベーションを保てなくなっている。
体制整備の方策➔通訳者のモチベーションと稼働率アップ
- 有償ボランティアはプロとボランティアに分離…プロ医療通訳とボランティア通訳は別組織に
- プロ医療通訳者のライセンス化…ライセンスを報酬アップの根拠とする
- 交通費支給…公共交通機関の運賃が首都圏と比べて高いため
- 報酬引き上げ…参考)警察通訳 平日日中の全国平均で約6,600円/h
発表内容は以上です。
ここで、行間を読んでみましょう。
なぜこのタイミングでAiMISの実情を暴露したのか?
各種研修会に参加すると「愛知県には素晴らしい医療通訳システムがある」と評価しか聞きません(県の担当者が発表すればそうなるのは自明……)。
現在、国はオリパラを前に各自治体で医療通訳システムを整備するように言っています。
AiMISは行政が主導しているので形としては自治体で導入しやすいと思われますが
登録している通訳者からは不満が多く、非稼働という状態が起きており、
問題山積。
このまま「マズイ」システムが日本全国に広がらないように、という発表者の願いがあります。
そして調査では非稼働は半数ですが
これは勉強する意思があってフォローアップ研修に参加した通訳者に占める割合。
研修非参加の方は非稼働の割合はもっと多いと推測されます。
だとしたら、これまで登録した人で稼働している人の割合は
もっと少ないのでは?
稼働できない人を養成してどうするんでしょう?
通訳者は、なぜ現状の報酬、有償ボランティアでの活動に否定的なのか?
登録している通訳者は、AiMIS以外の医療通訳組織からより良い報酬で
通訳に行っている、
ビジネス通訳(報酬はもちろん良い)など他の業界の通訳経験者も数割、
通訳経験20年以上という方も複数いるという背景なので
他の仕事と比較して
要求されるレベルはビジネスベースなのに立場・報酬はボランティアベースな点に
納得がいっていないのです。
時給は2時間5000円以上希望が5名いましたが
5000円「以上」であって、もっと高い時給を希望する声もここに含まれています。
同じくコミュニティ通訳に分類される司法通訳は
「医療通訳」よりは高い報酬(それでも不十分と言われています)が用意されています。
https://ameblo.jp/greengrasschinasalon/entry-12421743640.html 参照
通訳費用の財源が異なるとは言え、医療通訳も同じくらい重要な仕事です。
それなのにこれほど格差があることを医療業界の方は知りません。
医療通訳業界は現在、医療従事者がメインになって医療通訳システムをうんぬんしていますが
当然医療界のことしかわかりません。
通訳業界のこと、他の業種の通訳業務報酬なども当然知りません。
医療通訳がボランティアからスタートしたことに安住してしまって
実はすでに医療通訳から他の業界に優秀な人材が流出していることに
気づいていないのです。
せめてコミュニティ通訳である司法通訳に目が向けば
これでは医療通訳システムは確立する前に崩壊するということに
気づくのではないでしょうか。