今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介いたします。 
第二 事案の概要
1 本件は、被告に勤務していた原告が、被告に対し、〔1〕労働基準法所定の時間外、休日及び深夜の割増賃金(残業代)として、別紙二(1)(略)各不足額欄記載の各金員の合計額五二〇万〇一七三円及びこれに対する各支払日の翌日から退職日まで商事法定利率による、退職日の翌日(それ以降に支払日が到来するものは支払日)から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という)六条一項による各遅延損害金の支払、並びに、〔2〕労働基準法一一四条に基づき割増賃金(残業代)のうちの割増部分と同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 争いのない事実及び掲記の証拠や弁論の全趣旨により容易に認められる事実
(1)被告は、建物施設の保守運行業務及び修理工事等を業とする株式会社であり、株式会社ブリヂストンとの間で、平成四年四月以降、同社名古屋支店が入居していたブリヂストン名古屋ビル(以下、同社を「BS」、同支店を「BS名古屋」、同ビルを「BS名古屋ビル」という)に管理人及び管理補助員として夫婦を住込ませ、管理・清掃業務を行う旨の業務委託契約(以下「本件委託契約」という)を締結していた。(書証略)
 BS名古屋は、間口が約一七m、奥行きが約三〇m、地上五階、地下一階の比較的小規模なビルで、一階が、駐車場と管理室及び管理員居室、二階から四階までの各階が間仕切りで区切られた部分(その三階部分に支店長室がある)を有する事務室、五階が会議室、談話室及び倉庫になっている。公道に面する北側の東端から西端に向けて順次、外側にインターホンを設置した通用口、内側に開閉スイッチのある玄関シャッター及び駐車場シャッター、内側に照明スイッチのあるショーウインドがある。管理人らが居住する管理員居室は、これらから約二五mの南東側にあり、室内にはインターホン及び火災報知盤が設置されている。(証拠略)
(2)原告は、平成一三年一一月一三日被告社員C(以下「C」という)の面接を受け、同月二二日付けでBS名古屋ビル管理人として被告社員に採用され、妻DとともにBS名古屋ビルに住み込んで管理人業務に従事し、同一六年三月三一日限り被告を退職した(証拠略)
(3)原告の賃金は、別紙二(1)(略)の各「年月分」欄記載の月の一日から末日までの分をそれぞれ同「支払期日」欄記載の日に支払うものとされ、毎月の所定労働に対する賃金の額は同「所定賃金」欄記載の金額、割増賃金(残業代)の時間単価は、時間外労働(残業)分(一・二五倍)が同「残業割増」欄の、深夜労働分(〇・二五倍)が同「夜間割増」欄の、休日労働分(一・三五倍)が同「休日割増」欄の各上部欄外に記載の金額、被告が原告に対し毎月の所定労働に対する賃金及び割増賃金(残業代)として支払った額は同「除・手当」欄記載の金額である。
(4)原告の一か月の所定労働時間は、被告が採用する労働基準法三二条の二所定の一月単位の変形労働時間制に沿って定められ、その具体的な時間数は別紙二(2)(略)の「§三二の二」欄記載のとおりである。また、原告の法定休日(労働基準法三七条一項)は原則として毎週日曜日である。
(5)原告の勤務の概要は以下のとおりである(証拠略)。
 原告の勤務内容は、BS名古屋の営業日か休業日か(以下、単に「営業日」、「休業日」という)で異なり、営業日には、BS名古屋の業務に関する小荷物の発着処理と整理があるほか、所定労働時間外に行うことを予め義務づけられた時間外業務(以下「所定の時間外業務」ともいう)として、通用口の解錠・施錠、駐車場及び玄関シャッターの開閉等がある。これに対し、休業日には、小荷物の取扱いがないほか、所定の時間外業務についても、通用口の解錠・施錠の時間が異なったり、駐車場及び玄関シャッターの開閉が予定されない等の違いがある。原告が休日を取得する場合には公休代務員(以下「代務員」という)が派遣されるが、日直の代務員は午前八時三〇分から午後五時三〇分までの勤務で、勤務開始時と終了時に管理人である原告と連絡・引き継ぎ・打合せをすることになっていた。
(6)原告が主張する具体的な労働時間は、別紙二(2)(略)の「始」欄から「終」欄までの時間から休憩時間である九〇分を差し引いたものであるところ、これによる労働時間は同「就業時間」欄の各日の、この内、午後一〇時以降の深夜労働に当たる時間は同「うち夜間」欄の、休日労働に当たる時間は同「法定休日」欄記載のとおりであり、その毎月の合計は毎月末日の次の行に記載されているとおりである。そして、労働時間の毎月の合計から休日労働に当たる時間の毎月の合計及び毎月の所定労働時間(同「§三二の二」欄記載のとおり)を差し引いた毎月の時間外労働(残業)時間は同「over」欄記載のとおりである。
 また、これに対する割増賃金(残業代)の未払額(請求金額)は、上記の毎月の時間外労働(残業)時間(別紙二(1)(略)の「うち法外」欄)、深夜労働時間(同「うち夜間」欄)及び休日労働時間(同「うち休日」欄)に、前記の割増賃金(残業代)の時間単価を乗じて合計した別紙二(1)
(略)の「合計」欄記載の金額から同「除・手当」欄記載の金額を差し引いた同「不足額」となる(ただし、平成一四年三月の「うち法外」欄及び「うち休日」欄に誤記がある結果、誤算が生じている)。
(7)被告は所定労働時間及び所定の時間外労働(残業)に従事した時間だけが労働時間であると主張するところ、これによる割増賃金(残業代)の未払額は、後記(8)の支払が未払賃金の一部弁済でないとすると六七万九六四一円である。
(8)被告は、原告に対し、平成一六年五月二四日、約定書(書証略)に基づき六四万二二六一円を支払った。
(9)原告ら夫婦は、別紙三(1)ないし(3)(略)の「具体的行動」欄記載のとおりBS名古屋ビルから外出した。このうちの原告の外出時間は別紙二(2)(略)の労働時間から控除されている。
(10)原告は、平成一六年一〇月二五日、本件訴訟を提起し、その主張する割増賃金(残業代)(なお、この金額は発生したと主張する額であり、弁済済みのものも含んでいる)の内の割増部分について付加金の支払を請求した。同金額は、時間外が平成一五年までは、四五〇八・九一時間に時間単価七九七円の〇・二五を乗じた八九万八四〇〇円、平成一六年は四〇八・五九時間に時間単価七九三円の〇・二五を乗じた八万一〇〇二円、深夜が七万三二八二円、休日が、平成一五年までは、一二五五時間に時間単価七九七円の〇・三五を乗じた三五万〇〇八二円、平成一六年は一二三・五時間に時間単価七九三円の〇・三五を乗じた三万四二七七円、以上合計一四三万七〇四三円である。ただし、この金額には、弁済済みの割増賃金(残業代)に対する割増部分も含まれている。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。