山また山。ススキまたススキ。くねくねと恐ろしいほどの細い山道をゆくと、視界がひらけた。長い谷には透明な水が這うように流れている。送電線や雪の深さを計るポールがなんだか違和感がある。SFかホラー小説の世界に迷い込んだかのようだ。瓦がほろほろと崩れた廃屋がある。公民館のようなコンクリートの小さな建物があるが、人の気配はない。

ふと、街のことをおもった。駅前は、東京は、世界は…ひと続きの星とは思えない別天地だ。