光陰矢の如し。
この春でバイオリンを習い始めて9年目になる。
毎年思っている気がしないでもないがおそらく、今がバイオリンを始めて一番面白い時期だと思う。
本当に。
ブログを書くのもほぼほぼ一年ぶりで、、記録しておかなければならない話が山ほどあるな!と思ってみたものの、改めて整理すると練習してきた項目自体はそれほど多くはない。
一年前に「愛の挨拶」を弾いた後、発表会にソロ演奏の参加をしなかった事もあってか弾ける曲のレパートリーは全然増えておらず曲といえば教本の練習曲ぐらいだし、技術的な練習として取り組んでいたのは「きれいな移弦」と「スピッカート」、最近始めた「重音」ぐらいだ。
文章にすると技術練習だけで、こればっかりで飽きないの?って感じだが、いやこれがなかなか飽きない。単純に「きれいな移弦」とは言うもののその都度クリアすべきステップは色々あるし、また昨年はバイオリンを弾く事に対して認識を改めた点もあり、練習が非常に面白く感じられたのだった。
そうだ、認識を改めた事は自分の中でわりと大きな転換点になった。これはメモしておこう。
具体的には「体で覚える」という体の状態について考えを改めることになった。
『頭で考えるのではなく無意識に体が適当に反応する。』なんて具合にいろんな場面で使われるが、バイオリンで言えば「発表会本番の演奏時にちょっとしくじって頭真っ白になってしまってどこを弾いてるかわからなくなったけど、体が覚えてたからよくわかならいけど何とか弾けた。」みたいな使い方があるのではないだろうか。
これまで、そんな技術をいつかは身につけられればなあ、と漠然に思っていた頃はあえて何も考えないようにしながら音階練習やら練習曲に取り組んだこともあった。頭を真っ白に、無に近づけたシチュエーションにしてバイオリンを弾く事が「体に覚えさせる」事に近づく事だと思っていたのだ。
そんな意識が変わったのはレッスン中での先生との会話がきっかけだった。
シュラディック教本を使ってホ長調を5thポジションで弾く音階練習に取りかかり始めた時のことだ。
初めての5thポジションの上、ホ長調は♯が4つ、率直に言ってわけがわからん。音階を上がって下りて課題を一通り弾き終わる頃には、自分が何の音を弾いてるのかちんぷんかんぷんだった。
「だいぶずれてますね。」( ̄_ ̄ i)
「ふひっ。」(^▽^;)
まいった、笑いが引きつる。
正直この時は全く弾ける気がしなかった。
一段落して、先は長いねえ、と一息ついていたところ先生から話しかけられた。
「ところでザックさん。右手で」
「は?ああ。」
何の話だろうかと思ったら
「耳たぶ触れます?」
「ああ、そりゃまあ。」
何のこっちゃと思いながら耳たぶを触る。すると
「へえ、目で見えてないのによく触れましたね。」
と、言われて先生の言わんとする事を理解した気がした。
ああ、まさに体で覚えるというやつ。
都合の良い裏技なんて有りえないし、体が覚えるまでとりあえず練習あるのみだなあ。先は長いけど、と折れることなく決意を新たにしたのだった。
で、普段ならそれで終わる話なのだが、その時は何故か帰宅してからも耳たぶを触った事を反芻していた。
耳たぶを触りながら考えてみる。
耳たぶを触って、と言われた時、確かに僕は頭で考えることなく耳たぶを触っていた。
しかしそれは、頭の中真っ白で何も考えてないけど耳たぶを触れたと言う感触ではなく、「耳たぶ」と言われた時点で頭の中では耳たぶの位置のイメージが既に出来ており、「触って」と言われたらそのイメージに沿って手を耳たぶに伸ばしただけという感触だった。
そこでふと考える。
これまで「体で覚える」と言うのは、思考をしない頭真っ白の状態でも体が適当に反応する事だと思っていたが、そうではなくそもそも頭が真っ白にならないほど強固にイメージが定着出来ておりそれに合わせて体を動かす状態の事を指すのだとしたら。
言うなれば「考えてないけど」わかると言うより「考えるまでもなく」わかるとでも言おうか。
無意識ではなく正反対の有意識の極み。みたいな。何の事やら文章にするのが難しいな。
なにはともあれ僕の中ではこれまでの考え方が劇的に変化した。(果たして先生がそういうつもりで話をしたかは別として)
この考え方に従うなら、練習時の意識の仕方は今までの真逆。
あえて何も考えないようにするのではなく、逆に意識して意識してイメージを作って頭の中が真っ白にならないように焼き付けてしまおうという方向だ。そのためには出来るだけ多くの情報を自分の中に持っておきたい。音階練習では、鳴らした時の音は勿論、目で見た指の位置、ひじの角度、ネックを握る感触、指の開き具合。そういう情報を蓄積させて自分の中で当たり前のように引き出せるようにするのだ。
そんな感じで練習時に自分が弾く事に対してちょっと意識が変わり、そして練習を重ねていくとやがて見えていた世界が少し変わってきた。
バイオリンそのものではなくそれを弾いている自分の体の状態を把握する事に焦点が移っていった。
どう弾いたらどこの筋肉がこわばるか、どんな体の使い方をすればどのように弾けるのか、といった具合に。
肉体がどう動作するのか注目する事に重きを置いていた僕にとって、移弦やスピッカートといった基本動作の復習的な練習はおあつらえ向きだった。
下手に曲練習をするよりシンプルな課題の方が肉体の状態変化を把握しやすい。
かくして、基礎練習ばっかりの1年だったが飽きることなく取り組むことができた。
その甲斐あって、今年に入った頃にはボウイング時に妙に緊張している僧帽筋に気づき、力づくで脱力させる事に成功し(このやり方が正しいかはわからないが)ボウイング時の弓のプルプルをほぼ完全に抑える事が出来るようにもなった。
で、自分なりに技術の向上を感じられた事もあり久々に発表会でソロ演奏をしようと思いたったのだった。
おっと、ブログを書いている途中で発表会が開催されてしまった。
また今度まとめよう。
→ to be continued!!