今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 
(3)以上によれば、原告の九月分の賃金は所得税などの控除前の金額で金三〇万四〇〇〇円であり、原告の一二月分の賃金は所得税などの控除前の金額で金一一万四八〇〇円である。
 右によれば、原告の九月分の賃金について未払はない。また、原告の一一月分及び一二月分の各賃金についてはいずれも未払であることは当事者間に争いはないが、所得税などの控除前の金額は一一月分が金四一万円、一二月分が金一一万四八〇〇円であり、所得税などの控除後の金額は一一月分が金三六万〇八六〇円、一二月分が金八万八九九一円である(前記第三の一1(四)。なお、証拠(〈証拠略〉)によれば、原告の一一月分及び一二月分の賃金から寮費としてそれぞれ金二万二〇〇〇円が差し引かれているが、原告の一一月分及び一二月分の賃金から寮費として金二万五(ママ)〇〇〇円を徴収することが正当であることは後記第三の三のとおりである。)から、被告は原告に対し未払賃金として合計金四四万九八五一円の支払義務を負っているというべきである。
(四)次に、原告は被告には未払残業代の支払義務があると主張するので、これについて検討する。
(1)原告と被告が本件契約の締結の際に原告の勤務時間は午後五時から翌日の午前二時までであること、そのうち休憩は一時間で実労働時間は八時間であること、原告はその勤務に係る店舗の営業時間の終了後に後片づけをすることなどを合意したことは前記第三の一2(一)のとおりであり、原告が勤務していた店舗では営業時間は午前二時までであり、営業時間の終了後に原告は店内の後片づけをしていたことは前記第三の一1(五)のとおりである。
(2)右(1)によれば、原告がその勤務に係る店舗において営業時間の終了後に行っていた店内の後片づけは一日の実労働時間である八時間を超えた時間における労働であるというべきであり、しかも、後片付けが行われたのは午前二時以降であるから、労働基準法三七条一項及び三項に基づいて本来であれば通常の賃金に五割り増しした賃金を支払うべきである。
(3)しかし、原告の一日の勤務時間は午後五時から翌日の午前二時までであり、右の勤務時間のうち午後一〇時以降の勤務は労働基準法三七条三項に規定するいわゆる深夜労働(残業)であるから、同項に従って深夜の割増賃金(残業代)を支払うということになるはずであるにもかかわらず、原告は一日の勤務時間のうち午後一〇時以降の勤務について一か月当たり金四〇万円又は金四一万円の賃金のほかに割増賃金(残業代)を支払うことを求めていないこと、原告の入社した日と同じ日に被告に入社したOは採用面接の際に一か月の賃金が金四〇万円であるという説明を受けてウエイターの仕事にしては賃金が高いと思ったこと(前記第三の一1(三))、被告は午後一〇時以降の割増賃金(残業代)も含めて原告の賃金を定めたと主張していることに照らせば、原告と被告は本件契約の締結の際に午後一〇時以降の深夜の割増賃金(残業代)をも含めて原告の一か月当たりの賃金を金四〇万円(ただし、所得税などの控除前の金額)とすることを合意したものと認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない(なお、深夜労働(残業)時間数が契約で決まっている場合に、その深夜労働(残業)に対する割増賃金(残業代)分をも含めた賃金の合意をすることは何ら労働基準法三七条に違反するものではないと解される。)。
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