嶋大夫さまとお別れ | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目


2月文楽公演一部、二部に行ってきました。
一気に観劇すると硲の脳がパンクしてしまうため、それぞれ別の日です。 

一部は三輪大夫さんを聴きに。
こちらの感想は別途。


二部は豊竹嶋大夫さまの引退狂言
我が推しメンであるところの人間国宝が、この度、現役を離れられます。
2月なんて永遠に来なければいいと思って四ヶ月。とうとうお声を聴ける最後の機会となりました。
(公演自体は22日(月)まで)


「関取千両幟」
嶋大夫さまと一門のみなさまで語られる演目です。
まず少しだけほっとしたのは、1月に大阪で観劇時よりは、お弟子さんがたの雰囲気が和やかであったことでしょうか。先月はちょっと、床(=大夫、三味線のかたのいる横手の小舞台)も客席も涙をこらえつつといった緊張感があったものです。
でもって硲は自身最初で(多分最後の)大向こうを掛けていました。全然構えてなかったのに、これが最後と思った瞬間、自然に声が飛び出ていて、本人が驚き。


さて、「関取千両幟」は、
関取の男の矜持と現実の厳しさがあり、相撲の興奮があり、妻の愛らしさと毅さがあり、短い中にも分かりやすい起承転結と緊張感のある名場面を楽しめる作品です。
(この短いってぇのが、大層不満でも有るわけですが……。)
二部初めの演目「桜鍔恨鮫鞘」のストーリーと主人公の頼りないキャラの後だと、余計にピリッとしていて好みです(^_^;)

正直、胡弓の音が少し邪魔とか、やはり短すぎるだろうとか言いたいことは多々具体的にあるのですが、
それよりなにより嶋大夫さまのお声が、語りが素晴らしかったという感想が第一です。最新が最高であるのでした。
温かい語りが劇場をひとつにしていて、あの場に居られたことを幸いと思います。


文楽を観始めて10年弱。
大変僭越ではありますが、その中で変わっていく進化していく嶋さんを拝見拝聴できたこと、その幸運を心より感謝致します。


あと1週間、
みなさまが千穐楽を無事に迎えられますよう、お祈り申し上げます。