ソフィアの憂鬱は、日毎に残忍なほど、鋭く敏感になっていった、

あのパレードのことすら、忘れたいのに忘れられない、

気持ちを、ただ、ひとつの狂気に纏めて、屑籠に捨てたかったけど、


わかるの、あたし、この曖昧に渦巻きとぐろ巻いたみたく、

こんがり焼けた、焼きすぎたのトーストの味と同じように、


腐ってしまって、食せない、苦い思い出が過ぎる、、



執事のリトは、涙も見せない、ただ平静を保つので必死な、

今にも崩れてしまいそうなソフィアを静観するしかないのが、辛かった、


ソフィアの想いを知っているからこそ、とても心臓が焼けるように痛かった、


「悲しみを二人で分け合いましょうよ、リト。」


甘い言葉にだって、酷く腫れた悲哀を引き摺っている、のなら、


「・・・それが、無意味でも?」

「愛は無意味だわ。」


窓際で煌びやかに咲き開いた薔薇の刺を指に当て、


「愛など、必要悪のひとつに過ぎない・・・。」


つう、と指から伝う血を舐めて貴女は、ベッドにもたれ込み、

一粒だけ、涙を流した、最後の、強がり、


「では、わたしを忘れないように、刻んでおきます。」



(貴方の想い人のお兄様は明後日、結婚されるのですから、

それまでに、貴女をわたしが愛しましょう。)



(しんしんと闇深き季節に追われて、)

(僕たちは、もう、錆びて皮すら切れない能無しナイフを見てた。)


彼女は死にたいといった。

僕は生きたいと思わなかった。


(絶望と渇望の狭間で揺れている、アレが、浮遊していく。)


彼女は食べたくないといった。

僕は食べるものがないといった。


(涙を溜めるタンクはもう、干涸らびたのに、)

(どうして、僕たちを殺そうとしないのですか?)


彼女はアレが欲しいといった。

僕には手が届かないと思った。


(近いようで遠すぎて、)

(まるで眼球に、膜がもうひとつ様な感覚で、)

(ぼやけて上手く手に出来ないことが、)

(何より神を憎む要因となっていた。)



_僕たちには逃げ場はもう無いのに、歩き続け、逃げゆく。

_神と讃えられた、陥落した人間を、いつか貶めるために、



アンドロイドの憂鬱、僕たちは、死ねない。


(君の薄い色の髪の感触だけが、僕の、救い。)