奈良県は30日の奈良公園地区整備検討委員会で、若草山(奈良市)一重目までの移動手段として、既存の管理者用通路を活用してバスを走らせる案を示した。山麓(さんろく)から一重目までモノレールを建設する構想には反対意見が強く、その代替案として寄せられた案の一つ。モノレール構想は一時棚上げし、今秋にも開かれる次回委員会にバス案の検討結果を報告する。
モノレール構想は観光振興などを目的に、県が検討を始め、今年6月には鹿などの動植物に与える影響はないとする調査報告が示された。しかし、設置場所は世界遺産?春日山原始林の緩衝地帯で、世界遺産候補高品質サッカースパイク を調査するNGO?国際記念物遺跡会議(イコモス)の日本イコモス国内委員会は1月、構想への懸念を表明。市民団体からも中止を求める署名が届いた。この日の検討委には、イコモス国内委の矢野和之事務局長がアドバイザーとして初めて参加し、モノレール構想について「世界遺産の価値を損なう」と批判した。
こうした声を踏まえ県は、これまでに外部から寄せられた代替案について説明。若草山の北側を走る「奈良奥山ドライブウェイ」から、若草山一重目につながる管理者用通路があり、奈良市中心部で奈良交通に委託して運行している「ぐるっとバス」を走らせる案が提示された。熱気球を使って空から眺望を楽しむ案も示された。
委員からはバス案について「通路があること自体知らなかった。最も現実的」「輸送量が適当」と好意的な見方が目立った。しかし、通路は舗装されておらず、最も狭い場所では幅員4メートルほど。「(通路は)あぜ道で整備が必要。かえって景観に問題となる」と反対意見もあった。次回会合で県が報告する検討結果を待つことになった。
県の中西康博?知事公室審議官は「(モノレールのような)構造物はない方がいい、という意見と受け止めた。バスなどのやり方で環境負荷や実現可能性を検討したい」と述べた。【釣田祐喜】