月組全国ツアーは市川公演を終えて後半戦ですね。

梅田に引き続き市川でも観ましたが、私この「ブラック・ジャック」がかなり好きです。

 

私はもともと正塚先生の作品が好きな傾向にあります。

ミュージカルだけじゃなくストレートプレイも好きなので、じっくりと芝居を味わえる感覚が面白いのです。

 

もちろん頭空っぽにして楽しめる作品の良さもありますが、宝塚の場合はショーがそれを担当してくれるので、芝居はやはり「役者の技量」をじっくり見せてもらえる方が好きです。

 

もちろん、あくまでも私個人は、です。

カッコイイ、きれい、可愛い、ラブラブ、キュンキュンをたくさん見せてもらえる作品が好きな方もいらっしゃるだろうし、そこは好みの違いです。

 

それに私も、そうは言っても「心に重すぎるドロドロ芝居」とか「救いようがない話」は好みではありません。

現実社会は理不尽なことが多いですから(苦笑)フィクションの世界くらいは救いが欲しいです。

 

そんなわけで、正塚先生の作品は私にとってとても好ましいものが多いのですが、今回特に面白く感じるのは何でだろう?と考えてみたところ、やぱり手塚治虫先生の作られたブラック・ジャック(以下BJ)というキャラクターの異質さでしょう。

 

本来の、正塚先生オリジナルのハードボイルド作品だったなら、主役はケインだと思うんです。

 

ケインという元情報部員が、体に爆弾(ハードに動くと命に係わる障害)を抱えながらも、世界的な武器ブローカーの壊滅に奔走する話。

彼には、想いがすれ違ってしまっている元同僚の恋人がいる。

障害を持って以来、人生に投げやりで彼女のことも疎ましく感じていたが、とあることがきっかけで彼女の気持ちを理解し人生をやりなおす決心をする…

 

ってな感じ?

それなりにカッコイイ物語になりそうですよね。

 

命をかけて世界を救う男!

ハードボイルド!

THE ヒーロー!

 

ところが残念なことに(え?)そこに登場するのが、BJ先生です。

何より命が大切で「生きてさえいれば」が口癖の、クールに見えて実は暑苦しいほどのお節介でお人よしの天才外科医←面倒くさい性格w

 

命をかけることを「バカじゃないのか?」とバッサリ。

世界を救うという任務を「敵も味方も同じ穴のむじな」と説教。

ハードボイルド界の常識が一刀両断ですwww

 

もうね、過去の正塚ハードボイルド作品にBJ先生を投入したら面白いんじゃないかと思っちゃいました。

例えば「マリポーサの花」とかさ、恋人を置いて戦場に行こうとする主人公ネロさんなんか、BJ先生に「バカじゃないのか?」って言われておしまいよw


ハードボイルド世界に「命オタク」を放り込む…このチグハグさが面白いし、私たち観客が当たり前だと思っていたものに「もしかしたらそれは間違っているのかもしれない」と気付きを与えてくれる。

己の価値観を見つめ直したりもする…そんな作品だと思います。


宝塚作品として一番難しいところは、BJ先生をトップスターが演じるということ。

原作を知らない人にも、BJ先生は変な人だけど「カッコいい人だな」と思わせるようにすることだと思う。宝塚だからね、トップスターはカッコよくなくてはいけない。

あるいは「かわいい人」でもいいけど←母性本能くすぐるタイプw

 

最後の最後に、敵であるサザランドを倒し(ただし命は大切なので銃は撃たない、気絶させるだけ)、さらにはヒロインの命を手術して救う、というところで「カッコいい」が成立する脚本が宝塚らしくて良し。

(前述マリポーサなら、エスコバルの命も助かっただろうなぁ)

 

さらに今回の月組公演が面白い一番のポイントは、やっぱり「芝居が上手い人ばかりが演じている」ことですね。

ひとりだけ上手くてもダメだし、ひとりでも下手な人がいるとダメな脚本だと思う。

セリフのやりとりの間が悪いと、見ている側の集中も切れる。

シンプルなセットも、アンサンブルの皆さんひとりひとりが生きた芝居をしているので、セットの無い空間をも埋められる。

本当に面白い演劇作品(あえてミュージカルとは言わず)です。

 

福岡でも観る予定なのですが、今から終わってしまうのが本当に寂しい。

次はキャスト別の感想を書きたいと思います。

 

 

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