- 夜と霧 新版/ヴィクトール・E・フランクル
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NHKの「100分de名著」に取り上げられるような書物だというのに、恥ずかしながら全く知りませんでした。
きっかけは言わずもがな?
「屋根の上のヴァイオリン弾き」でユダヤ人に興味を持ったからです(^^;
いえ、ちょっと違うかな。
ユダヤ人に、というよりツァイテル・モーテル夫婦やチャヴァのその後に想いを馳せたからですね。
「屋根-」の原作が書かれたのは第二次世界大戦より以前です。
そしてミュージカルが作られたのは戦後。
この間にドイツ、オーストリア、ポーランド等で起こったユダヤ人の悲劇。
それを意識して、ミュージカルでは原作と違い、ツァイテルたちはワルシャワへ、チャヴァはクラクフへ向かうという設定になっていることは疑いようが無いと思います。
(原作ではエルサレムへ向かいます)
この本の著者は、実際にその強制収容所での体験をした人です。
どんな暗くて惨いことが書かれているか…と構えて読み始めましたが、感情に訴えるというよりも客観的に分析するような筆致で、読む側としても感情的になるよりも色々と考えながら読み進めることが出来ました。
とは言え、さすがに食事中に読めるような内容ではありませんでしたがね(^^;
(私は平日ランチタイムがひとりなので本を読みながら過ごすことが多いです)
確実に言えることは、この体験をした人のようには絶対に感じられないということ。
同情なんて余地は無いですし、想像力の限界を超えてもとうてい無理です。
でも、著者やその周囲の人が体験したこと、感じたことを自分なりに考えてみることは出来ると思います。
印象的だったのは
「悪の集団と善の集団があるとして、悪の集団のなかにも善人がいるし、その逆もある」
ということ。
前者はまだ想像内でした。
例えばフィクションではありますが「ロジェ」に出てくるシュミットがそうですよね。
けれど後者、同じユダヤ人で同じ被収容者でありながら同胞を痛めつけて利益を得る人間がいた…という事実はまったく想像もしていなかったので、驚愕であり恐怖でした。
「生きることに何の意味も無い」と言って死んで行く人(自殺だったり免疫力が低下したり)が多かったなかで、この本の著者は『生きることの意味は、ただ生きること』と考えています。
さて、自分が極限状態に置かれたときにそんな風に考えることは出来るだろうか…と思いますが、頭の片隅に置いておきたいです。
そして、この本が震災後の東北で売れている事実も合わせて考えたいです。