3姉妹のトークショー付きの公演、2階席の前方ほぼセンターから観ました。
ネタバレありです。
2階から観るのは初日以来でしたが、初見ではストーリーを追うのに必死で気付かなかったことを色々と感じました。
舞台の上部は半円で背景が切り取られていますが、2階から眺めるとその半円と床面の円形の照明が合わさって、まるで丸い箱庭のように見えるのですね。
丸い箱庭…テヴィエの世界。
それはまるで彼の世界を、オペラグラスで覗いているかのような錯覚です。
彼の世界は「しきたり」に守られた小さな箱庭だった。
それが少しずつ崩れていく。
小さなきっかけは長女が自由に恋人を見つけたこと。
大切な娘たちが「しきたり」からはずれていく。
次女は村の外の男と愛し合い、そして三女は信仰の違う男と駆け落ちをする…テヴィエの箱庭の崩れはだんだんと大きくなっていく。
箱庭の床の色がテヴィエの心を映して青色に染まったり、渦のような模様を描いたりするのが2階席からだとよく判ります。
それでもなんとか円形を保っていたテヴィエの世界はついに「アナテフカからの強制退去」で完全に無くなってしまうんですね。
セットの半円が飛んで、箱庭が崩壊する。
「よそのことは、よそに任せておけばいいんだよ」と笑っていることが出来なくなる。だって「ここ」自体が無くなってしまうんだから。
それでも、テヴィエは神様に向かって微笑んで見せます。その強さに観ている私たちは勇気を持つことが出来ます。
そして箱庭は無くなっても、ヴァイオリン弾きはそばに居るんですよね…「一緒に来いよ」って自分が呼ぶ限りは。
それがアイデンティティってものかもしれないなぁ、と思いました。
ちょっと上に書いたこととは違いますが“円とその崩壊”について演出の寺崎さんのブログに書かれていました。
なるほど、あの最後に「手を繋がない」という演出にはそんな意味があったのかぁ、と興味深く読みました。