覇王クビライ、という副題の通りクビライ(フビライ)の半生を描いた本です。

ドラマチックというより淡々とした印象。
読みやすいんですけど、盛り上がりには欠けるかな?


遊牧民であるモンゴル人と、定住民である漢人との感覚の違い
多くの宗教を容認するモンゴル帝国と、儒教の教えが強い南宋の違い

そういった比較はおもしろくて、文天祥の思想に困惑するクビライ…といった描写のあたりは「客家」に絡めて興味深く読みました。



「海嘯」で何十ページ、何百ページにもわたって描かれていた南宋末期の武人たちの命懸けの奮闘と苦悩。
それが、こちらではほんの数ページ…というのが、なんとも切なく。

また、この時代の少し前の朝鮮半島が『我が愛は山の彼方に』の舞台なわけですが、あの作品の中ではモンゴル人は「非文化的な野蛮人」という扱いで…

同じ事柄、同じ民族でも立ち位置や描かれ方によって、主人公になったり敵役になったりするんですよね。

でも歴史なんてそんなものかとも思ったり…





「ままならぬものだな」

ユーラシア大陸の大部分を手中に治めた覇王。
そのクビライが晩年に何度かつぶやくこの言葉が印象的でした。


ままならない…本当にね、人生思ったようにはいかない。
クビライみたいな傑物だってそうなんだから、凡人の私なんて振り回されて流されてばかり。

でも生きていくしかないから。
あきらめずに…ね。