数年前、突然火を噴いた麹(こうじ)ブームが一段落した。

 

塩こうじ、醤油こうじ、甘酒などなど、これまでなじみの薄かったものが日本全国の家庭に広まった。

糀屋さんや食を真剣に考える方々の努力と、メディアの力のたまものであろう。

 

この頃は料理にこうじを使うのは当たり前、お菓子にだって使われていたりする。

こうじの調味料もいろんなものが出ていて、思わず買いたくなってしまう。

 

ひっそりと人気だった甘酒が、今やスーパーの目に付く棚に各種並んでいるのをみると、21世紀人の市民権を得たのだなあと感心してしまう。

 

ぶどうさんもこうじ調味料のファンである。

なぜなら、調理がぐっと楽になるから。

以前は塩こうじだったが、今は醤油こうじばかりだ。

 

北国には、こうじ文化、漬物文化があったため、糀屋さんがあった。

世間でこうじブームが起こっていたので、ぶどうさんも、のこのこと糀屋さんに行ってこうじを買い、塩こうじを作っていた。

 

しかし、西の国に来たら、思うほど糀屋さんを見つけられなかった。

手作りみその文化はあるのに、こうじだけを売っている店が圧倒的に少ない気がした。

当時は、それが普通だったのだろう。

 

それがどうだ。

 

最近は、スーパーで、産直で、どこにいってもこうじを買うことができる。

選択肢が増えて、うれしいばかりだ。

 

どこででも、いつでも手に入るようになったためか、一時期は行列してまでこうじを買っていたのに、今では行列なんてできなくなった。

 

ある日、久しぶりに糀屋さんの前を通ったとき、こうじを買い求めている人の連れが驚きのセリフを吐いている場面に遭遇した。

 

「え~。まだ塩こうじつくってんの?」

 

・・・・・

 

糀屋さんで、それをいう?と思ったが、それよりも、「まだ」というセリフが気になった。

 

塩こうじは、以前は作るしかなかったが、今は売っている。

作らずに買うものという意味なのだろうか、それとももうブームは去っているからイマドキ?ということだろうか。

 

塩こうじを作るのは、流行おくれなんだ!

ぶどうさんの頭の中にそんな言葉が響き渡った。

 

市民権を得ているとばかり思っていたこうじ調味料が、一部でははやりものとみなされていたとは、なんともいえない驚きであった。

 

洋服も化粧も、音楽も全般で流行おくれのぶどうさんのこと。

 

動揺しつつも、醤油こうじ用の生こうじ300gを買い求め、本日より醤油こうじをつくり始めるのであった。