春浅い頃引越しをしたぶどうさん。


越してきた西の国は、北国よりずっと時間が進んでいた。


同じ国ながら、季節も、環境も、時間の経ちかたもまるで違う、けれど懐かしい場所。


ぶどうさん夫婦は、さしずめ現代の浦島太郎と花子であった。


その引越しは、実は今も続いている。


続いているといっても、また引っ越すとかそういうのではない。

引越しの箱が、そのまま残っているのだ。


一つや二つならいざ知らず、使わない部屋にだら~~~っと蓋をあけたまま床一面に数ヶ月鎮座している。


かなり見苦しい。


どうやって生活しているかというと、生活空間だけは最初に確保したので、そこでごまかしながら生きている。


この箱がなくなる日はやってくるのだろうか。


毎日箱を横目でちらりと眺めては、どうやって片付けるかなあとしばし考え、目が泳ぎだす。

現実逃避という奴である。


多分数ヶ月箱に入ったままで置いておけるということは、少なくとも人生に必須のものではないということだ。

もうちょっと厳しくいえば必ずしも必要じゃないことは明らかであり、たぶんいらないものだろう・・・・


それが認められても、やっぱり捨てられない。


しかし、今のぶどうさんは、どうしてもこの箱を何とかする必要があるのである。


なぜなら、現在引っ越してきた家が賃貸であるからである。


賃貸であるからには、いつか引っ越さねばならない。

一生すめるわけではないのである。


家主が売ってくれるというなら、もう引っ越したくないから売ってくれ!といいたいほど今後引越しはしたくはないのだが、引っ越さねばならない。


なぜ引っ越したくないかというと、今回の引越しが大変だったからである。


前回、前々回の引越しと、それぞれに大変であったが、今回はそれ以上。


北国で時間をかけてかなり荷物の整理をし、物を捨て、片付けていたつもりだったのになぜか一番大変なことになってしまった今回の引越し。


まったく不可解である。


回を追うごとにどんどん大ごとになっていくぶどうさんちの引越し。


一体なぜにこんなことになるのだろう。


数年後に引越しがあるとして、理由もわからずにこのまま暮らしていけばもっと大変なことになる。


40代後半の引越しが、精神的にも体力的にもかなり堪えるなど想像だにしなかった。


50代ともなれば・・・・引越し後寝込んでしまうことになるだろう。


それはまずい!



未来の、現実味を帯びた危機感ゆえ、頭を悩ませ続けたぶどうさん。


出した解決策は、今の生活を変えるしかないということだった。


今の生活を変えるには、とにかく引越しの後始末を追え、引越しを完了し新しい生活をはじめる区切りをちゃんとつけること。


それとともに、まずはいらないものを手放し少ないもので暮らせるようになることで次の引越しの物理的なハードルを下げること。


それくらいしか思いつかないが、やることが少ないほうが初志貫徹継続しやすいので、そこから始めることにした。



さあここで宣言しちゃったからには、やるしかないね、ぶどうさん。

次の引越しに、今の箱のまま持っていっちゃダメよ!


箱をきれいになくして床面が出るのはいつの日か(何年後か?)とにもかくにもがんばるしかないぶどうであった。