5月のとある日。

久しぶりに平日にスーパーに買い物へ行ったぶどうさん。


かごを取り、カートを押して店内にはいると、すぐに青果売り場のカラフルな野菜や果物が目に飛び込んでくる。


今年はまだまだ寒い北国。

最低気温が1度を下回る日もあるくらいの天候不順で、葉桜の花がやっと散り始めるという始末。


そんなこんなだから山菜以外の地元産の野菜や果物はそんなに沢山は無い。

あるのは輸入の果物や、県外からの苺や柑橘類ばかり。


柑橘類のとれない北国では、国産の柑橘類は比較的高い。

だからなのか、買いやすい値段の輸入のオレンジ類も豊富に揃えられている。


けれど柑橘類王国に育ったぶどうさんとしては、どちらもあまり魅惑的には感じない。

感じないけれど、体はどうしても柑橘類が欲しいというので、試しになにか買うことにした。


どうせ輸入物を買うのであれば、普段は夫が好きなグレープフルーツを選ぶ。

買うなら、いつもばら売り。バラで買っても纏め売りでもあんまり値段が変らないからだ。


しかしこの日に限って、なぜか1個あたり通常より30円も高い。

なんだかちょっぴり悔しいのでグレープフルーツはやめて、食べたことの無い「手でむけるオレンジ」に手を伸ばした。


みかんのように食べられる、オレンジ?

ちょっといいかもと思いながら袋の中身を吟味しているとき、白いシールが目に入った。


そのシールには「イマザリルのみ使用」の文字。

どうやらこの果物には、防カビ剤を使用しているらしい。


以前そのスーパーで買ったグレープフルーツ、それにも当然使ってあったはずである。

そんな表示は見たことが無い気がするが、そのオレンジには使用薬剤が表記してあった。


輸入果物、とくに柑橘類にはポストハーベストといわれる防カビ剤のイマザリルやOPPなどが.使用してあるのは知っていたが、改めて表示を見るとどうも買う気が失せてしまう。


結局オレンジはやめ、北国に果物が出回るのを待つことにした。


グレープフルーツは目を瞑って買っていたくせに、表示を見てやめるとはご都合主義で勝手なものである。


そうはいっても。


ぶどうさんはイマザリルの名前を覚えていたから買うのをやめたけれど、一体どれほどの人が「イマザリル」の表示を見てポストハーベストだと思うのだろう。


しかも「のみ」使用などという表記の仕方は、疑問が残る。

1つしか使っていないという意味では正しいけれど、読みようによっては「1種類しか使ってないから危険性は低いのよ」なんて、勘違いするかもしれないじゃないか。


その昔、牛肉オレンジの輸入自由化で連日ニュースがかしましい時期があった。

そんなこと、もう今はとっくに忘れ去られ、輸入オレンジがあるのが普通の風景になってしまった。


防カビ剤つきの、他所の国からやってきたオレンジが北国のお茶の間でも楽しまれているのだろう。


それは選択なのだろうか、それとも密やかなる洗脳なのだろうか。


ふと、薄ら寒い部屋で薄ら寒いものを感じずにはいられない気持ちになるぶどうであった。