四月一日。新年度第一日目。

四月馬鹿の日でもあるが、この際このことは忘れておこう。


日本全国には、この日を前後に新しい生活を始めた方が沢山いらっしゃることだろう。

進学、就職、家を取得又は住み替えて転居、もしかして隠居。

理由はそれぞれだろう。


日本人の大半の、誰にとっても四月は始まりの月。

主婦業のぶどうさんでさえ、四月の声を聞くと、年の初めとは違う、なんだか新しい気持ちになる。


暦の上とはいえ誰にでも、いつでも出発又は再出発のチャンスがあるということは、とてもいいことだ。

気分を変えて、新しい自分に生まれ変わったつもりでこの月を迎えようではないか。


ところで世間では、四月のスタート前の三月に引越しの嵐が吹き荒れる。

住み慣れた町を離れ、新しい土地へ向かう儀式とでも言おうか。


ぶどうさんの住むアパートの中でも、引越しが数軒あった。

月初めに上司より突然転勤を言い渡されて、大混乱のうちに引越しの準備を行ったと聞いている。


三月は引越しシーズン。

サラリーマンだけでなく、学生も、家を買う人も多くが新年度を狙う。

そうなると、業者の手配が難しくなってくる。

なにしろ、沢山の人がいっぺんに動き出すのだから。


近所の方の引越しも、例外ではなかったらしい。

かなり早くから手を打ったにもかかわらず業者の手配が難しく、引越しの日が希望通りにならないうえ、荷物を運べたにしてもこんどは搬入の目処が立たないという有様。


おそるべし、三月の引越し。


かくゆうぶどうさんも、この時期に引っ越したことがある。

それはもう、大変であった。


時間通りに業者は来ない、業者は来たがやっつけ仕事、おまけに「荷物が多すぎる」と依頼主の悪口まで影で言う始末。


引越し業者なんだから運ぶのが仕事のはずである。

あきれた給料泥棒である。


このやっつけ仕事のせいで家具は傷だらけ、もう二度とシーズン中に引越しをしようという気持ちはなくなった。

引越しは、業者が暇なときにやったほうだ安いし丁寧だろうと思うのである。


この春、ぶどうさんちに引越しはなかった。

かなり残念ではあったが、上記の理由から、やっぱりこの時期でなくてよかったとおもう。


他所のお宅の教訓を生かし、突然の辞令で大混乱のうちに引越し作業をせずに済むよう、少しずつでも不用品を捨て家の中の掃除を念入りにしておこうと心に誓うぶどうであった。