とあるウェブ書店を開いて目を見張ったぶどうさん。
いつも通りおすすめの本が全面に掲載されていたが、見慣れない表紙ばかり。
明らかに昨日とは違うものが並べられている。
たった一日でがらりとおすすめを変えるなんざ仕事熱心なことだと感心する一方、コミックでもない、ハードカバーの小説でもない本の様子に、目を凝らしてみた。
コミックや小説は、タイトルを見ただけでは中身はほぼわからない。
けれど一連のおすすめ書籍は、タイトルを見ただけで何をテーマにしたものか、すぐさま理解できた。
ずばり
「アンチエイジング」
〇才なのに〇才にしか見えないといわれるお医者さんやモデルの本や、企業食堂のレシピ本、腸や遺伝子にフォーカスした食べ方や暮らし方、体の代謝を高める方法や習慣などなど・・・
すべてに当てはまるテーマがアンチエイジングなのだ。
健康なのは、素晴らしい。
若々しくあり、はつらつと人生を送るのはすがすがしく、美しい。
国民全体が若く健康である、あり続けるというのは、個人の問題ではなくもはや社会問題であり、国の命運をも左右しかねないことである。
素晴らしい、どんどんやってくれ!
そう思う一方で、ふと嫌な気持ちもよぎった。
たしかに、若く健康であることは、個人的問題ではない。みんながそうであれば、社会が若返り活気づくし、高齢化も少子化も、皆保険の将来の崩壊の危機さえインパクトが少なく済みそうである。
経済は活性化し、アンチエイジングがこれからの日本の一大産業になるかもしれない。
その一方で置き去りにされているものがある。
国のあり方や政治への参加、社会貢献や地域社会の地盤固め。
現在衆議院が解散し来月解散総選挙という事態に陥っているのに、ニュースもブログ等の話題も一切無しのうえ書籍の案内も無し。
まるでマスコミや商業ベースでアンチエイジングを大々的に取り上げて、個人の意識をうちへうちへ向かわせ、全体へ向けないようにしているかのようにさえ見える。
いや、見たくない人と見せたくない人の利害が一致しているといったらいいのか。
つまり外向きのベクトルを欠如させ、内向きへ内向きへと意識を向かわせることでこの場を、この状況を逃避しようとしているようにさえみえる。
こうなるとエネルギーは小さく圧縮されていき、いつしか消滅するか爆発するか・・・・
どちらにせよ未来の展望はない。
人は一人で生きるためではなく、他と生きるためにある。
そのためには、外、内へのバランスをとりながら歩んでいく必要がある。
この、内向きへのベクトル礼賛のような社会風潮というか、扇動は憂慮すべきものではないだろうか。
アンチエイジング結構、若くて健康なお結構。
しかし、人として社会でどう生きるかということを常に頭に置きながら内を磨いていくという、ベクトルバランスを保たなければ、社会はいつか崩壊することだろう。
家庭は小さな社会、地域社会は身近な自治体、国は小さな世界。
すべてに参加する責任と義務と権利があるのだから、よりよき国作り、世界作りのためにいかにあるかと心がけることが、よい人生に繋がるのではないだろうか。
常に意識を外とうちに向け、絶妙なバランス感覚で生きる。
自分のためがひいては他のためになるように、自分が他のために何をするかを意図することのバランス。
人の道をあるくということは、自分のためと自分に関る、もしくは見えない関りのために何をするかを絶えず問われ続け示し続けることなのかもしれない。