アイロンをかけようと、納戸部屋で座り込んでいたぶどうさん。


ドアの向こうで声が聞こえる。


どうやら夫が話しかけている模様。

しかし、よーく耳を澄ますと、話しかけているのではなく捜しているのだと気がついた。


ここにいるよと返事をすると、夫はのこのこやってきて、用事を言いつけた。

そして最後にこういった。


「もう!トイレにいると思ったよ。今度からトイレの前にスリッパ脱ぎっぱなしにするのやめてくれない?」


うーん、スリッパがあるからトイレにいると思ったのは夫の勝手、ぶどうさんの知ったことではない(おいおい、行儀悪いのを棚に上げるのかい)


けれど、トイレにいると確信させたということは、もしかしてぶどうさんは気配を消すのが得意なのかも。


そういえば実家では、父にもよく捜されていたっけ。

狭い家の中、娘がどこに行くというんだいと思ったものであったが(信用なかったのか?)現在は夫に捜されてしまう身になるとは。


気配を消して雲隠れ、なかなかどうして、すごい特技じゃあないか。


などと悦に入っていたが、よーく考えてみたら「やりっぱなし、だしっぱなし、放りっぱなし」を見た父や夫が、ぶどうさんにフェイントかまされてた・・・ってことなのかと気がついた。


つまり、幼い頃より40年以上つづく生態と悪癖。


あなおそろし、三つ子の魂百まで。ついでに悪癖そのまんま。


マダムになってちょっとは成長したつもりであったが、実のところ全く変らない自分を発見したぶどうであった。