北国は、素晴らしい季節を迎えつつある。


花は咲き緑は萌え鳥はさえずる。

いわゆる楽園状態だ。


土地に住んでいる人がそう感じているのかどうかは、知らない。

気候条件が悪いから、差し引きちょいプラスくらいとしか思ってないかもしれない。


でも、どうしてどうして。

日差しが透明で、植物が映える光が差し込み、花も葉もとても色鮮やかだ。


冬が長い地域の人は庭の手入れが好きなのか、大抵の家はとてもきれいに花で彩られている。

庭に限らず街路樹下のちょっとした土にも花が咲き、地域の人が手を加えている。


暖かい地方生まれの私にとって、厳しい冬で殆ど死んだかのような土地や植物が、この季節に息を吹き返していっせいに花開く美しさは驚嘆であった。


暖かい地方では冬でも常にどこかに緑があり、なにがしかの緑がだらだらと風景の中にあり続ける。

それが当たり前であり、いつまでも一続きの自然が延々と時の中にあるかのような気がしていた。

それゆえ緑の新鮮さやありがたさを感じることはなかった。


けれど北国では、多くの自然が生まれ変わる。

再び生まれ変わった喜びを自然も人も当たり前に受け取り、短い成長のときを大いに楽しんでいる。


当たり前が当たり前ではなく、当たり前でないことが当たり前とは、全くなんと愉快なのであろう。


この地の人はこの地を離れて、他の地の人はこの地に来て、全く逆の発見をするとは、心にくい演出である。


王冠2マダムはへんげの女。いく先々で土地のものと親交を深めるべし