私はどこにでも居るごく普通の27歳です。
そんな私が遺書を書いているわけですが
別に余命宣告をされたわけでもなく
別に自殺願望があるわけでもありません。
ただ、もし明日絶命する様なことになってしまえば
自分の胸の内を誰にも伝えることができず
この世を去ることになってしまうわけで
それはあまりにも無念だと考え、今ここに遺言を綴っているわけであります。
ひとつ加えておくならば
今回ここに書いている遺書が
初めての遺書というわけではない。
私が19歳で上京をして間もない頃に
何気なく読んだ文章の中で
「年に関係なく遺書は書いておく方がいい」
といったニュアンスの言葉が綴られており
それが書籍だったのか論文だったのかも
定かではないのだが
それを期に、月に一度のペースで
この様にして遺言を綴っている。
なので、タイトルにある「遺言」と言うよりは
「2018年12月時点での遺言」の方が
正式なタイトルなのかもしれない。
だが、今回の遺言はこれまでの物と明らかに違う点がある。
それはこうしてSNS上に書くということだ。
これまで作成した物は、皆目にしたことがあるであろう
紙媒体のもので、毎月大体5枚ほどの紙に
想いを綴ってきたわけだが
よくよく考えてみれば、残す財産など何もなく
残す相手も限られているため
法律上無効とされているPCで作成されたものであっても
私個人としては何も問題がないことに気付き
(単純に字を書くのが面倒というのもあるが)
アメーバさんのブログというツールを用いて
遺言を綴ることにしたわけである。
もし2019年1月を迎えることなく
僕がこの世を去ることになった場合
僕が経営をしているお店で母が遺品整理を行う際に
キャビネットの一番下の段に入れてあるメモ用紙に書かれたURLを入力することで
この遺言に辿り着くことができるというわけだ。
一点、気にかけていることがある。
SNSというのはどうしても人の目に触れてしまうもので
もちろん鍵をかけてしまえば他人の誰にも読まれることなく
身内にだけ伝えることができるわけだが
やはりそこは目立ちたがり屋の性分なのか
他人にも読んでほしいという感情もあり
一般公開された遺言として残すことにした。
だが、その際に母であったり恋人であったり
母はともかく恋人の名前を綴っていいものなのか
はたまたイニシャルで記載するべきだとしても
それはどこか寂しい部分もあるため
自己完結という勝手な判断にはなるが
ニックネームで登場していただくことにした。
何より自分自身の特定は避けたいため
私自身のフルネームであったり、経営する店の名前は伏せるものとする。
それでは、前書きが長くなってしまったが
これより本題。
遺言状
遺言者であるtetsuは、この遺言書により、次の通り遺言する
一、遺言者tetsuは、遺言者の所有する「飲食店」を構成する一切の財産を、母に相続させる。
一切の財産とは、「飲食店」の営業を行うために遺言者が所有する全ての財産を言う。
尚、「飲食店」の内装を含む営業権を譲渡してほしいと要望している友人がいるため
中学の同級生で女子バスケ部のキャプテンだった人物に母は速やかにコンタクトを取ること。
二、遺言者tetsuは、所有する現金全てを母に遺贈する。
尚、遺贈された現金は祖父母との今後の笑顔溢れる生活のために使わなければならない。
以上の遺言を証するため、遺言者はこの遺言の全文を自署し、自署押印する。
と言いたいところではあるが、PCのため撤回する。
以下は、特別伝えたいことがある4人へのメッセージ。
はるへ
ごめん、死んでしもうた(笑)
結婚して、家庭持って、明るい将来が俺たちにはあると思っとったのに
はるの看護師になるって夢叶うのめっちゃ楽しみにしとったのに
それすら見届けずに死ぬことになったんはほんまに残念。
あ、でも俺が死んだからって勉強するん辞めたりするなよ。
お母さんのために看護師なるって決めたんやったら、ちゃんとやりきるんやぞ。
あと、綺麗さっぱり俺のことは忘れろ!て言いたいけど
どうせ天邪鬼なはるのことじゃけん、絶対忘れんって言うじゃろうから
俺みたいなええ男のことは忘れんな。
でも世の中にはもっとええ男がいっぱいおるけん
ちゃんと出会って幸せになってくれ。
ただ、その男が俺が認めるええ男じゃねかったら
夜な夜な幽霊として出てやるからな。覚悟しとけよ。
ばあちゃんへ
ばあちゃんはこの文章を自分で読めんじゃろうし
母ちゃんとかじいちゃんが読んでも理解できんかもしれんけど
伝えたいことを書くので聞くだけ聞いてやってください。
ばあちゃんは僕の中でスーパーヒーローでした。
子どもの時、勉強を教えてくれたり
意地悪だった女の子から守ってくれたり
困ったことがあると先ずばあちゃんに相談していたのを覚えています。
中3の時にばあちゃんが病気して喧嘩になってから
確か高3くらいまで一言も口利かんかったな。
ばあちゃんの攻撃的な態度が薬の副作用だってわかった時
ほんまに申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど
それを伝えてもばあちゃんはまともに会話できる状態じゃなくなってて
僕の気持ちはちゃんと伝わっていましたか?
あと、僕が東京から帰ってきて
母ちゃんからばあちゃんはもう僕のことわからんかもしれんって言われて
会いに行くのが怖くて一度も行けんかったのもごめん。
ほんまは会いたかったし、話をしたかった。
また一緒に家族四人で暮らしたかった。
僕のせいで叶わんかったな。ごめんな。
向こうに来るときは元気なときのばあちゃんで来てな。
またいっぱい僕の知らんことを教えてな。
じいちゃんへ
母ちゃんには申し訳ないけど、僕はじいちゃんのことが一番好きでした。
父がいない僕にとって唯一の男家族というのもあったとは思いますが
ずっとじいちゃんの背中を追いかけて生きてきました。
じいちゃんの様な男になりたい。
越せるかどうかはわからないけど、少しでも近付きたいと思ってきました。
でもこの遺言を読まれているということは
その願いも叶わなかったということになります。
無念ではありますが、大好きなじいちゃんを失う悲しみを経験せずに死ねることは
大変身勝手ではありますが、ありがたいです。
先に逝くワガママな孫をお許しください。
ひとつ後悔があるとすれば
最近じいちゃんと将棋を指せていなかったことです。
いつもゲームでコンピュータと指すじいちゃんを見て
本当は僕と指したいんだろうなとは思っていましたが
仕事が忙しいことを言い訳に避けてしまっていました。
じいちゃんがいつか亡くなってしまったら
(できるだけ先にしてください)
その時は疲れ果てるまで指しましょう。
向こうで特訓しておきます。
母ちゃんへ
あれだけ親孝行してやるって言っていたのに
最大の親不孝である先に死ぬなんてことになってしまい
本当に申し訳ございません。
いつも冷たい応対ばかりで辛い想いをさせたかと思いますが
僕は、あなたの子どもに生まれて本当に幸せでした。
あなたを母親に持てた人生で本当によかった。
その想いをちゃんと言葉にできなくてごめん。
生きてる間にきちんと伝えておけばよかったけど
それはやっぱり照れ臭かったので
この文章を読んで理解してやってください。
母ちゃんって呼ぶこともほとんどなく
「なぁ」とか「おーい」とかって呼んでごめん。
ちゃんと呼んでおけばよかった。
赤いスポーツカーとルビーの指環を買うって約束は
守る気も更々なかったけど
指環くらい買ってあげてもよかったと後悔してる。
残ったお金に余りが出たら自分の好きなやつ買って。
僕からの最後の親孝行です。
まだまだ伝えたいことはたくさんあるけど
それは向こうにみんなが来たら話します。
それでは、皆さんお先に長期期間を頂きます。
おやすみなさい。