前回までのあらすじ
自分は50代麻酔科医師。
がん検診で偶然に大動脈解離が見つかった。
近くの医療センターの心臓血管外科では早めの手術を勧められたが、周りからのアドバイスで日本一の症例数を誇る、神奈川県のk病院でセカンドオピニオンを申し込んだ。
日曜日の早朝の電話でセカンドオピニオン予約も取れた。
週明けに医療センターから診療情報提供書とこの前やった造影CTのコピーももらうように申し込んだ。
K病院のコメントがどうなるかわからないから、医療センターでの術前検査の予約はそのまま生かしておいた。
週前半はそのまま仕事の予定。
スタッフたちも心配してくれた。
自分としては鋼のメンタルだとは思っているが、やはり人工心肺だとか逆行送血だとか人工血管だとか、知ってる人ほど恐ろしさも増すものだ。
木曜日。医療センターにて術前検査一式。
丸一日覚悟していく。
採血に造影冠動脈CT。
患者用ガウンを着せられるとこっちはもうまな板の鯉になった気分だ。
レッテルが医師から患者に代わるとメンタルがやられる。
あーもっと患者さんに親切にしなくちゃな。病気が治ったら患者さんの支えになれるようさらに努力しなくては、と心に誓う。
造影CTは先週もやった。がん検診でもCTやった。2週間で3度目のCT。
CTは痛い検査でないがかなりの放射線を浴びる。レントゲンが身体の周りをグルグル回りながら撮影するのだ。
そして今回は冠動脈を撮影するために心拍数を落とす薬を飲んでじっくりゆっくりの撮影。
被爆者である。
年一くらいならどうってことないが
2週間に3回である。
かなり体力が落ちる。免疫力も抵抗力もダダ下がりである。
実はこのあとかなりだるくなって苦しむことになる。
心電図や頸の超音波、その他もろもろを終えた。
1日かかると言われてたけど1時過ぎに終わった。
都内の両親の墓参りに出かけることにした。
2日後は親父の命日だ。
親父が死んだ日もこの日のようにとても暑かった。
命日の分のお経を読んでくれるように寺にお布施して、もう少しそっちに連れてくのは待ってくれないかと墓に手を合わせる。
まだやりたいことあるし子供もまだしばらく金も手もかかるし。
なんの症状もないし、痛くも痒くもないけど病人なのかな俺。
今まで仕事で何千人のオペの麻酔をしてきたけどみんなこんなふうに怖かったんだろうな。
病人て、患者って気の毒なもんだな。
明後日にセカンドオピニオンだ。
判決を待つ罪人の気分だ。
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