Wordplay
いやあ、もうじき春です。それでもここは北海道恵庭市。まだまだ溶けかけの雪が残っててよう滑ります。これが「スベります」だとオモロないわー、の意味になります。あとは志望校に…あ、もう受験シーズンもいいとこ終わりだし、親御さんからもガタガタ言われないですよね。よかったです。あは、あははっはっは何だとガタガタ言いやガッタとは何だペラペラ野郎。
符丁、というものがある。スラング、ジャーゴン、ぼくらの合言葉はだっふんだ、その他一般的ではないが各専門分野にて限定的に通じる単語や言い回しの事、だと思う。
この符丁、会話に挟むと何だか物識りっぽい気分になれるため、何の専門知識もないのに符丁とされる単語だけを沢山仕入れたい、という欲求にかられたりする。
かと言ってあまり多用すると「半可通」なる知ったかぶりでイキがった奴向けの不名誉な称号を頂戴することもあるため、なかなかにさじ加減が難しいものではある。この時点で符丁の存在理由を完全に置き去っている気がするが、まあお気になさらず。
昨今では上に挙げた「スベる」以外にも「ボケ、ツッコミ」「引く(ドン引き等)」「(話題を)振る」等々、お笑い関係の符丁について軽々と多くの人が使いこなすご時世であり、これはもう符丁とは呼べないのではないかという錯覚すら覚える。
音楽関係にももちろん、ある。私も音楽業界の何かと関わりがあるわけでもないのに、何でか知っている符丁が幾つか、ある。
「PA」さーん、「ナカオト」もっと「モニター」したいんで「クリップ」ギリまでお願いしまーす。
何言ってんの、と思われるか。私も思う。聞いたことのある単語を思いつくまま並べて無理やり繋げただけなので、上の各単語を調べたり、用例に間違いがないか真面目に考えたりしないように。約束だぜ。
しかし、何言ってんの、と思いつつも何も知らない頃の私は、いや、今も知らないが、符丁だらけの話をしているバンドマンや楽器屋さんに遭遇したときには底知れぬ畏怖を感じたものである。
よって、知らない単語をぞろぞろ並べる人と会話ができるようになりたいと思い、雑誌やらネットやらであれこれ調べたりもした時期もあった。だからそれは意味ないって言ってんじゃん大体お前はいっつもそうやって学ぶことを忘れて上っ面ばかりこのアホこのえふりこき、って放っとけコンチクショウ。
そんな欲求が薄れたのはいつからなのか。はっきりと覚えてはいないが、現在の職種にある程度なじんでからなのは確かだ。
「バール」は皆知っていると思う。「のようなもの」なる接尾込みで報道番組でおなじみのアレだ。釘も抜ける、殴って壊せる万能ツール。これを、ある爺さんは当然のようにこう呼んでいた。
バリ
南国ではない。ある業種ある地方ある会社でのバールを示す符丁だ。
何だそれ。全然特別な気がしないぞバリ。字数が一文字消えて呼びやすいってかバリ。語感ちょっと悪くなってないバリか。
もう一つ。「金てこ」をご存知か。これは氷を割るのに使ってる人も見かけるが、あまり一般的でない鈍器で、片方の先端は尖り、もう片方はへらのようになった1メートルちょっとの長い鉄の棒だ。これをある業種ある地方ある会社ではこう呼ぶ。
ドンツキ
ああ、何というか、もう。痛そうだドンツキ。かっこ悪いぞドンツキ。なんか方言くさいなドンツキ。
もう沢山だとは思うが、ここで例文。
ちょっと「ドンツキ」取ってきて。「バリ」じゃ小さすぎるわ。
爺さんに言われて「はいはいわっかりましたあ」と私は軽トラの荷台に走る。何の疑問もなく。「金てこ」じゃなく「ドンツキ」を取りに。
符丁にそれほど魅力を感じなくなる所以である。