レスベラトロールは赤ぶどうの皮や生薬のイタドリ(虎杖)に多く含まれています。
インド伝統医学のアーユルヴェーダでは、赤ぶどうを発酵させて作ったジュース(darakchasava)が心臓疾患の薬として古くから使用されています。
赤ぶどうに含まれるレスベラトロールやその他のフラボノイドなどの成分による抗酸化作用や心臓保護作用が、薬効として利用されていたと考えられます。
聖書には、グレープジュースや赤ワインは「神様の贈り物(gift of god)」と記載されています。
フランス人はチーズやバターや肉類やフォアグラなど動物性脂肪を多く摂取しているのに、他の西欧諸国と比べて心臓病の死亡率が低いことが知られており(いわゆる「フレンチパラドックス」)、その理由として、赤ワインに豊富に含まれるポリフェノール類による抗酸化作用が指摘されており、特にレスベラトロールの効果が言及されています。
培養細胞や動物を使った基礎研究では、レスベラトロールががんや循環器疾患や神経変性疾患など様々な病気の予防や治療に効果が期待できることが示唆されています。
しかし、これらの薬効が人間の病気に有効かどうかはまだ十分な証拠はありません。
現在、レスベラトロールの薬効や安全性に関する多くの臨床試験が行われています。
1日5gくらいまでの摂取は安全性に問題が無いと報告されていますが、1日2.5g以上では、軽度の胃腸症状が出るという報告もあります。幾つかの臨床試験では1日0.5~1.0gが投与されています。
レスベラトロールの抗がん作用を期待するには1日数グラム程度の摂取が必要です。食品で最もレスベラトロールを含む赤ワインでも1リットル当たり0.1~14.3mgというデータが報告されています。グレープジュースでも1リットルで数mgしか含まれていません。したがって、食品やワインからの摂取では1日数10mgの摂取が限界のようです。
現在、イタドリの根や赤ぶどうの皮から抽出された純度の高いレスベラトロールが製造され、サプリメントに使用されています。このような製品を利用すれば、1日数100mgから数グラムの摂取が可能です。
イタドリの根は生薬では「虎杖根(コジョウコン)」と言い、昔は生薬として流通していましたが、現在は日本では販売されていません。
虎杖根にはレスベラトロールが入っているので、銀座東京クリニックでは抗がん漢方薬の作成に利用していましたが、1日数10グラムの虎杖根を加えても、レスベラトロールの含有量は抗がん作用を期待できるほどではないようです。そこで、抗がん作用を目的とした漢方薬に、イタドリから抽出されたレスベラトロールを加えるというアイデアがあります。
レスベラトロール1gとガンマCDを10g程度を混ぜて、レスベラトロールをガンマCDに包摂させることによってレスベラトロールの溶解性と消化管からの吸収性を高めて、1日に数回に分けて服用する方法をがんの代替医療の一つとして行っています。
この方法で1日分は500円程度です。レスベラトロールの安全性と多彩な抗がん作用、さらに動物実験における有効性を考慮すると、がんの代替医療の一つとして試してみる価値はあるかもしれません。