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動きと学びの冒険へようこそ!

ラーニングクエスト学習センターのブログです。

なぜ、脊椎動物の迷路(内耳)で平衡覚と聴覚という性質の
違う2つの感覚を受容しているのか?という迷路を探検中です。
☆膜迷路の探検の話はこちら

平衡器であった膜迷路が聴覚を担うようになった理由は
まだよくわかっていないみたいです。
感覚器の進化(講談社ブルーバックス;2011年)という本には
【円口類や魚類などの側線器(※)には、水の流れのほかに、
水を伝わってくる周波数の低いかすかな震動に対しても敏感
に反応する感覚細胞が分化してきた。
(中略)
その後、感覚細胞は周波数の高い振動にも反応するように
なり、それらが集まって膜迷路の聴覚部になったのではない
か(177ページより引用)】
と書かれていました。
(※)側線器についてはこちら

水の流れを感知する細胞が、水を伝わる振動を感知する
機能を持つようになったのですね。
そして魚類にも迷路(内耳)があります。それは感覚細胞の
一部が側線器から膜迷路へと分化する際にラゲナ班という、
ヒトでいうところの蝸牛管に相当するものが作られ、高い
周波数の振動にも反応するようになったということのようです。

つまり、全ては水を伝わる振動を感知することから
始まったのですね。

水は振動することができるので音を伝えることができます。
魚は側線器と内耳で音を感じています。
つまり、魚は水を伝わる音を全身で聞いているのですね!


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身体が傾くと、耳石器にある耳石という炭酸カルシウム結晶が
重力の作用で位置がずれて感覚毛が刺激されて、感覚細胞の
神経から中枢神経に信号が送られます。
中枢神経系が、身体が傾いていると判断すると、これに対応
して筋緊張を調節し、身体の傾きを戻したりしています。
とここまでは、前回の話です。

耳石はほとんどの動物に存在していて、自前でこの耳石を
作っていますが、そうでない動物もいるようです。

感覚器の進化(講談社ブルーバックス;2011年)という本に
面白い例が載っていたのでご紹介します。

【甲殻類のザリガニ類は、水底に落ちている砂粒をハサミで
すくいあげて、平衡石として使っている。
ザリガニ類の平衡感覚器は、第一触覚のつけ根に開いた裂孔
にある。裂溝の内部がそのまま平衡胞になっていて、この中に
入れた小さな砂粒が、平衡石の役割を果たしている。
ザリガニ類は脱皮するとき、平衡胞を覆う上皮と一緒に砂粒も
放出してしまう。そのため、脱皮した後は、また水底の砂粒を
すくい上げて平衡胞に入れ、それを新しい平衡石にしなければ
ならない。(引用終わり)】

砂鉄を含んだ砂地でザリガニを飼育すると、砂鉄を平衡石として
取り込んでしまいます。そのザリガニに磁石を近づけると、砂鉄
が磁石で移動しますが、それを重力に対する傾きと錯覚し、磁石
の反対側に身体を倒したりするそうです。
また砂のない水槽で飼育すると、脱皮後に平衡石が取り込めない
ので、横倒しになったり、反転したたりと、姿勢が定まらなくなっ
てしまうとのこと。
ザリガニを飼うときには、砂粒が必要ということですね。
なぜ、脊椎動物の迷路(内耳)で平衡覚と聴覚という
性質の違う2つの感覚を受容しているのか?という迷路を探検中です。

今までの迷路探検の話はこちらこちら

私の持っている医学事典には前庭は耳石器(卵形嚢+球形嚢)のこと
と書かれていますが、半規管と耳石器で前庭系という場合もあるよう
です。

それはともかく、今日は耳石器の話です。
耳石器は、主に左右方向の直線加速度を感受している卵形嚢と
主に上下方向と前後方向の直線加速度を感受している球形嚢に
分けられます。
これらには、それぞれに平衡斑という前庭神経の終末器官があり、
半規管と同様に有毛細胞が並んでいる。この表面に感覚毛を
包んでいる耳石膜があり、この膜の表面には炭酸カルシウム
から成る結晶状の耳石が載っています。
読んで字のごとく、石がある器官なのですね。

耳石は内リンパ液より比重が重いので、直線加速度が加わると、
耳石は慣性の法則に従い、元の位置の留まろうとします。
その結果、耳石膜が身体が動く方向と逆方向に変位することで、
有毛細胞の感覚毛を屈曲させ、有毛細胞を刺激します。

屈曲の方向とその効果(興奮または抑制)のメカニズムは半規管の
場合と同じですが、違いは、
・耳石器は耳石の動きに反応する
・半規管は内リンパ液の流れに反応する
ということですね。

さて、いよいよ次回は、膜迷路が聴覚器になった理由について
調べてみたいと思います。

【参考文献】
岩堀修明 著:感覚器の進化(ブルーバックス;2011年)


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なぜ、脊椎動物の内耳で平衡覚と聴覚という性質の違う
2つの感覚を受容しているのか?という迷路を探検中です。
 前回の探検の話はこちら

内耳には骨の中に骨迷路と呼ばれる空間が存在し、その空間に
半規管、前庭(卵形嚢、球形嚢)、蝸牛管を合わせた膜迷路が
あります。
膜迷路は内リンパ液で満たされた薄い膜でできた袋でできていて、
平衡覚と聴覚という性質の違う2つの感覚を受容しています。
半規管、前庭が平衡覚部、蝸牛菅が聴覚部です。



膜迷路には、昨日ご紹介した水棲生物の側線器に存在する有毛
細胞が存在しています。
そして、平衡覚部は脊椎動物ではその構造はほぼ保存されています。
一方、蝸牛菅は動物差が大きいので歴史的に新しい器官だとされて
います。

平衡覚部の半規管は回転加速度を感受します。
そして前庭部には直線加速度、重力、遠心力の感受機能頭部の
傾斜を感受して眼球や四肢の状態を調整する機能があります
なんとなく前庭部は陸上で生活する際に必要な機能があるような
気がしますね。

今日は半規管について紹介したいと思います。

魚類の垂直方向に2本、魚類以上の脊椎動物は水平方向の1本が
加わり3本になります。いわゆる三半規管ですね。
半規管膨大部と呼ばれる部位には感覚細胞が集まっていて、
その突起が集まって、昨日越ご紹介した頂体を形成していて、
半規管を満たす内リンパ液の中を浮遊しています。

頭が回転すると感覚細胞は頭と一緒に動きますが、内リンパ液は
慣性の法則により、元の位置に留まろうとします。その結果、
頂体と内リンパ液の動きに時間差が生じ、頂体の中にある感覚毛が
曲がり、頭が回転したと感知する神経が興奮するのです。

魚類の場合、まわりの水の流れによって側線器の頂体が曲がり、
感覚毛も動き刺激が伝わるのですが、陸上の生物も半規管内の
内リンパ液という水の流れを感知しています。
側線器と同じようなメカニズムなのですね。
ちょっと驚きです!
前庭については次回にご紹介します。


【参考文献】
岩堀修明 著:感覚器の進化(ブルーバックス;2011年)


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という訳で、耳、特に内耳の進化について調べ始めました。

魚類には身体の中央に前後に伸びる点線があります。
これは「側線器」という感覚器官の出入り口なのだそうです。
側線器は “水の動き”を知るための感覚器官で、これは魚類
の他に、ヤツメウナギなどの円口類、両生類の幼生などの水棲
動物に存在します。
水の動きは水棲動物にとって重要な情報です。
たとえば河川では水の流れる方向を感知することで上流と下流、
どちらを向いているかがわかりますし、海でも海流の方向を
キャッチすることでどちらに泳いでいるか知ることができます。
さらに水の不自然な動きで敵や仲間を発見することも可能です。

この側線器の一部が長い年月をかけて頭蓋骨の中に入り込み
「膜迷路」という平衡覚と聴覚を受容する受容器になったと
考えられているそうです。
水の動きをする器官が膜迷路の始まりだったのですね!

それでは側線器の構造を見てみましょう。
側線器には「有毛細胞」という細胞があります。
有毛細胞には1本の長い「動毛」と30~40本の「不動毛」が
生えています。
これらを合わせて「感覚毛」といいます。
この有毛細胞がいくつか集まり、感覚毛は「頂体」という
ゼリー状の物質に覆われています。


水の流れによって頂体が曲がり、感覚毛も動くわけですが
不動毛が動毛のほうに動く
   →有毛細胞が興奮
      →神経伝達物質を放出
         →神経細胞が興奮する
動毛が不動毛のほうに動く
  →神経細胞の興奮が抑制
というようなメカニズムになっているそうです。





陸に上がった脊椎動物にとって水の流れを知るための側線器は
不要になり、退化してしまったのですが、有毛細胞は膜迷路の
中で生き残ったのでした。(続く!)

★おまけ★
ヤツメウナギの側線器は光も感知しているらしいです。

【参考文献】
岩堀修明 著:感覚器の進化(ブルーバックス;2011年)



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